このあいだの在韓米軍幹部の発言だが、出処は時事通信だった。
重大発言の割りにはフォローがない。発言の背景が今ひとつ不明で、唐突な印象を否めない。
共同通信はこの発言をもう少しフォローしている。それが以下の部分。

この発言を受け、米国防総省のリトル報道官は「米国は日米韓の協力拡大に期待している」とする談話を発表し、日韓関係の改善による日米韓3カ国の安全保障面での連携を強化する重要性を強調した。

 また、ロックリア米太平洋軍司令官は同日の記者会見で、北朝鮮などによる脅威が高まった場合は、憲法9条の改正について「議論を行う必要が出てくる」と述べ、日本国内の動きに一定の理解を示した。(共同)

上記の記事で分かるように、在韓米軍幹部の発言は「つい喋ってしまった」という性格のものではない。国防総省の報道官も太平洋軍司令官も、在韓米軍幹部の発言を否定せず、それを前提として、日本側の衝撃を和らげるコメントを発している。

明らかにアメリカ軍・政府のチームプレーのもとで行われたものだ。

それは日米2プラス2会談の時期を狙って放たれた矢と考えるべきであろう。


ここで注目されるのがロックリア米太平洋軍司令官 の発言。これが良くわからない。憲法9条の改正について「議論を行う必要が出てくる」 とはどういうことだろう。誰と誰が議論するのだろう。

あるブログでは、これは誤訳ではないだろうかと指摘している。誤訳とすればゆるがせにはできない。しかし会見の全文はとりあえず見当たらない。定時の記者会見であれば、太平洋軍のホームページに行けば手に入るのかも知れないが…


時事通信の配信した文章全文があった。赤旗の省略した部分は以下のとおり。

ただ、この後ソウル市内のホテルで記者会見 したロックリア太平洋軍司令官は、北朝鮮をはじめとする脅威に対処するため憲法を変える必要があると感じた場合、「日本など地域各国の政府は議論を行う必要が出てくる」と強調。日本国内の動きに一定の理解を示した。 

つまり、「在韓米軍幹部」というのは、どうもロックリア本人の可能性が強い。

もうひとつ、ロックリアは「日本など地域各国の政府 は議論を行う必要が出てくる」と言っているのであって、日本国内に配慮したわけではないということである。むしろ「日本が憲法改正で突っ走るのなら、こちらは周辺国と対応を協議しますよ」という警告に近い。


ロックリア(Samuel Locklear)でグーグル検索してみると、下記のファイルを見つけた。

今年2月1日 電話記者会見 AFPの配信

米国は(アジア地域に)さらに基地を建設するつもりはない。(過去60年にわたって)この地域はいたって安定していた。戦略機軸の転換は基地新設を意味するものではなく、従来の同盟関係を強化し近代化していくことだ。

アジア太平洋地域における戦力バランスを米国が『再調整』するのではとの憶測や疑念が著しいが、これだけは言わせてもらいたい。再調整とは協調と協力の戦略だ。

尖閣問題は軍事介入なくして諸政府間で決定してほしい。最終的な帰属については、米国は判断を下す立場にはない。


日本関係情報 

国立国会図書館調査及び立法考査局
【アメリカ】 米太平洋軍及び戦略軍の態勢に関する下院公聴会
海外立法情報課・新田紀子

その一部

…ロックリア司令官は、次のように述べた。

第二次世界大戦後、米国は同盟国やパートナー国との関係を基本的には二国間関係の枠組みを中心に、ハブ・アンド・スポーク体制として構築・機能してきたが、一定の戦略環境の変化と多国間関係の重要性が増大している。

米国は、その意味で多国間枠組みを追求し、東アジア・サミットなどを支持しており、同盟国との関係においても、日米韓や日米豪といった3か国の活動も追求対象としている。

とすれば、「議論を行う必要性」は日本国内への配慮ではなく、韓国、場合によっては中国もふくむ議論の必要性と読み取るべきではないか。

次が7月11日の国防総省での記者会見

中国が経済大国化する中、中国海軍が自国領海から外洋へと進出してくるのは不可避だ。

しかしこれに伴い、(中国海軍の)若い司令官や指揮官が絡む誤算が生じる恐れ」は否定できない。

こうした衝突を回避するために米中の軍当局間で対話を進め、公海上などでルールを共有する必要がある

なお、ロックリアはこの会見で、「中国海軍の艦艇を米海軍基地に停泊させることを検討中だ」とも語っているようだが、産経新聞はこの部分をカットしている。(「人民網」には共同電によるとしてこの一文も掲載されている)




何れにしても、ロックリアの論調はアーミテージの第三レポートとは大分趣をことにしているようだ。どうもこのへんの事情が理解できていない。赤旗でもそういう論調はお目にかからない。