Grigory Ginzburg というピアニスト

リヒテルとかギレリスより一世代上のピアニストなのだろうか、これまで聞いたことがなかったが素晴らしい。テクニックのほどは良く分からないが、リストのカンパネラを聴く限り相当のもののようである。ただこの人の良さはそういうところではない。

演奏はこの頃の演奏家としてはザッハリッヒかも知れないが、私には十分に優しい。

リズムの良さと音の明瞭さ、それに絶妙なフレージングが光る。とくに弱音がよく響くのには驚く。その代わり強音にはピアノが耐え切れない。
テレビ録画が残されているが、ピアノは安物のベヒシュタインだ。ということは腕がいいから響くのだ。(52年だからテレビではない。映画として撮影されたのだろう)

Grigory Ginzburg plays Liszt La Campanella.

音源は主として50年代のものだ。しかもスタジオ音源でないものが多い。しかしUp主の手で処理が行われて、ずいぶん聞きやすくなっている。

そういう人だから、ショパンはとても、とても良い。とくに即興曲集は絶対の聞き物。こんなに温かく優しいショパン、思わず涙ぐむほどだ。それに引き換え葬送行進曲は圧倒的な迫力、別人のようだ。ワルツの作品64の2はちょっと崩している。練習曲も早過ぎ。音も悪い。

Grigory Ginzburg plays Chopin Sonata No. 2 in B-flat minor, Op. 35 (2/2)

Grigory Ginzburg plays Chopin Etudes Op. 25 (No.1 to No. 6)

Grigory Ginzburg plays Chopin etude op. 25 no. 7

Grigory Ginzburg plays Chopin etude op. 25 no. 11

Chopin - Impromptus - Ginzburg 

Grigory Ginzburg plays Chopin Waltz in A flat Op. 42

Grigory Ginzburg plays Chopin Waltz in c-sharp minor, op. 64, no. 2.

Grigory Ginzburg plays Chopin Polonaise in B flat Op. 71 No. 2

もちろんモーツァルトも良い。ただし幻想曲ハ短調は、この人らしからぬたたきつけるようなタッチが気になる。

Grigory Ginzburg plays Mozart Concerto No.25, K.503 (1/4)

シューマンも良い。アベッグ変奏曲は1952年録音というが奇跡的な音だ。トッカータは擦り切れたLPの再生で、聞くに堪えない音質。「パガニーニによる2つの練習曲」も聴けるが、それ以上のものではない。

Grigory Ginzburg plays Schumann ABEGG Variations Op. 1  

「ウィーンの謝肉祭の道化」の間奏曲。絶妙だ。

Grigory Ginzburg - Schumann Intermezzo

バッハは感心しない。ブゾーニのおどろおどろしい編曲で「どうだ」と言わんばかりの演奏。しかしシチリアーナは絶品。

Bach/Galston - Siciliana from BWV 1031- Grigory Ginzburg

スクリアビンはかなり期待したが、この演奏に限りペケ。コンサートの実況録音だがコンディションが悪かったと見える。音質も劣悪。(2番もアップロードされているが同然)

Grigory Ginzburg plays Scriabin Etude Op.8 No.12 (LIVE)

リストの演奏もあるが、私はリストが好きではない。(リスト弾きとして名を馳せたギンスブルクには申し訳ないが)
しかし下記の演奏は1948年録音というが驚異的だ。

Grigory Ginzburg plays Liszt "Totentanz"

Liszt Paganini Etude No 4 Arpeggio Ginzburg Rec 1951.

アンコールピースだが、思いっきり名人ぶり発揮したのがベートーヴェンのトルコ行進曲。指が15本くらいありそうだ。録音も秀逸。

Grigory Ginzburg plays Beethoven/Rubinstein "Turkish March"

ほかに、レオニード・コーガンと組んでクロイツェル・ソナタやグリークを録音している。どちらかと言えばコーガンを聴くためのディスクであろう。音も古い。