八木啓代さんという方がいる。本籍は歌手だが大変マルチな方で人脈もすごい。
もう20年も前になるか、札幌でリサイタルがあって、その時同行したのがアンヘル・パラ(Angel Parra)という歌手。八木さんの美声もさることながら、パラの歌には感動した。
その後の交流会で、彼の亡命中の苦労話を聞いて、本当に真面目な人だなと思った。ただしラテンの人の真面目さというのは日本人の黙々というのとはちょっと違う。
彼のカセットテープをしばらく聴き続けた。最後の「ポプラ並木」という曲はいつも涙が出た。
と、ここまでが前置き。

最近YouTubeでアンヘルの歌が続々とアップロードされている。70に手が届こうとしているが歌は若い。
人気に乗ってか、昔の歌も聴けるようになった。
その中の決定版がこれだ。

「新しい祖国の歌ども」 canciones de la patria nueva

アジェンデと人民連合がもっとも意気盛んだった年のアルバムだ。
自作が3曲、他にガルデルのアウセンシアやパブロ・ミラネスも歌っている。“Miles de Manos”というのが良い。

多分ビクトル・ハラとは全く別のラインでヌエバ・カンシオンの領域を開拓していたのだろう。学園やメディアを通じて有名になったハラとは違い、親の代からの筋金入りで民衆の歌を歌っていたパラは自分こそが本流という意識を持っていたと思う。

だからサッカースタジアムでハラが虐殺されたと知った時、そこにいるべきは自分ではなかったかと思ったかもしれない。
とすれば、それは恐ろしい体験だ。実存していることが恐怖なのだから。

これ以上は彼が死んでから書くことにしよう。私のほうが長生きすればの話だが…