東北アジアの新たな枠組み

ベトナム共産党、ベトナム議会、そしてインドネシアのASEAN対しとの会談を重ねてきた。

だんだん志位訪問団の狙いが見えてきた。

それは東北アジアの新たな枠組み概念の模索だ。

それは、これまで掲げてきた「6カ国協議」という多国間枠組みの放棄とつながっている。

(「放棄」は間違いでした。インドネシアでは「6カ国協議を成功させるための努力を進めつつTACのような取り決めを作るという日本共産党の政策的な展望を説明」している。ただ、ここが唯一の言及であることも確かです)

それは第一に、「6カ国協議」の枠組みを超えた、より包括的な課題を取り扱う枠組みの創設だ。「6カ国協議」は北朝鮮核問題については有効なツールであるにせよ、これを東北アジアの平和と発展の枠組みとすることはできない。

第二に、それは日中韓に北朝鮮を加えた当事4国が主体となり、それに周辺国が加わるという枠組みとなるだろう、ということだ。それはASEANを基軸にTACを成立させた教訓を踏まえている。

それを志位さんは「TAC型」枠組みと称している。

志位さんが念頭に置いているのは尖閣問題だと思う。

だから、ベトナム共産党とは相当突っ込んだ話し合いをした。それが政治局員との会談である。

そこで紛争の平和的解決という道を確認した。それは中越両国・両党間の交渉の道を一方に残しつつ、全体としては多国間主義を貫くということである。あえて言えば、ベトナムの個別利益を優先させないということである。

そして、ASEANと中国との交渉の中で南シナ海行動規範(COC)の実現を目指すことを確認した。

この平和主義の原則と多国間主義の原則は、原理的には、中国外交当局にとっても受け入れ可能なものである。

片や領土・領海問題、片や北朝鮮核問題を念頭に置いて、北東アジアの平和の枠組みを語るとすれば、たしかに「TAC型」あるいはそれに類する枠組みの創設は避けて通れない。

率直に言って、北東アジアはASEANとは比較できないほど複雑だ。そこにはGDP2位と3位の大国がふくまれる。しかも朝鮮も中国も分裂国家であり、冷戦時代の傷をいまも背負い続けている。

そこで志位さんは、インドネシア政府の考えを引用する形で、

1.動的均衡: 大国の関与を否定せず、それを平和共存と共同繁栄につながるパワーとして捉える。

2.包括性(Inclusiveness): 関わりのある全ての国との対話と信頼醸成。

の二点を押し出している。ただ、それほど詰めた検討を行っているわけではなく、志位さんみずから述べているように「ASEANの経験と教訓を学びたい」というのが今回の訪問の目標となっている。

昨日の記事でも書いたが、おそらく中国は志位訪問団の一挙手一投足に注目していると思う。

率直に言って中国外交は行き詰まっている感がある。「二つの大国論」にかなり毒されている。ただ中国の権力構造は多層・多重であり、政策の決定は積み上げ方式によるものだ。

今回、石油政策のトップまで汚職摘発の手が伸びたことは、膨張政策を推進してきた軍産複合体への反撃とも見て取れる。

「TAC型」枠組みへのアプローチを開始するとなれば、当然中国との議論が必要となる。今回の訪問は、それに向けての瀬踏みでもあろう。幕は開いていないが、序曲は始まったのである。

それはある意味で中国自身の期待でもあろう。