「導管国」って?
「導管国」をめぐる問題 その1
「導管国」をめぐる問題 その2
「導管国」をめぐる問題 その3
「導管国」をめぐる問題 その4

オフショア事業・投資拠点とオフショア・タックス・ヘイブンとの間に介在する「導管国(a conduit country)」をめぐる国際課税

-実効税率引下げ競争に利用されるサンドイッチ・スキーム-

名古屋経済大学大学院教授

本 庄 資

税大ジャーナル 17 2011. 10

という長い題名の論文があって、文章も相当長い。44頁もある。多分素人で読む人は殆どいないだろう。

なんとか抄読を作ってみようと思う。

◆SUMMARY◆

1.先進諸国では2000年以降、法人税の減税を中心とする「有害な税の競争」(a harmful tax competition)が行われた。

2.欧州ではさらに、多国籍企業の租税対策に対応して「税金ゼロ」をオファーする競争が始まっている。

3.持株会社誘致を目的とする「魅力ある税制」の典型がオランダである。オランダはいまや事業拠点とタックス・ヘイヴンを結ぶ「導管国」(a conduit country)となっている。イギリスもその後を追っている。

4.このような「導管国」を利用した実効税率引下げ法はダッチ・サンドイッチ・スキームと呼ばれる。(ダッチはダッチワイフのダッチ)

はじめに

1.日本のタックス・ヘイブン対策

1978年の税制改革: 海外会社を通じて稼得する国外所得は二つある。このうち外国支店の利益には日本で課税される。いっぽう外国子会社の利益は日本に配当として還流されない限り、日本では課税されない。後者を「課税繰延」(tax deferral)と呼ぶ。

この時の政府税調答申では「近年、いわゆるタックス・ヘイブンに子会社等を設立し、税負担の不当な軽減を図る事例が見受けられる。このような事例は、税負担の公平の見地から問題のあるところであり、…所要の立法措置を講ずることが適当である」とされる。

2.米国のタックス・ヘイブン対策 「サブパート F」

進出形態にかかわらず、課税は国内投資と同様に行うべきである。国外所得の課税繰延は原則として認められない。

これはケネディ大統領の時代に確立したものである。ケネディは「世界中のタックス・ヘイブンに設立した外国子会社に課税繰り延べの特典を与える必要はない」と主張した。

これを受けた議会は、タックス・ヘイブンにおける外国子会社の国外所得を「汚れた所得」(tainted income)とし、合算課税を行う「サブパートF所得」制度を創設した。

これが世界初のタックス・ヘイブン対策税制といわれる。

サブパートF は、ブラック・リスト等による地域限定方式を採らず、「議決権または株式の50%以上を米国人が所有する外国法人」と定義された。

そして所得限定方式により「汚れた所得」(tainted income)を算出し、該当米国人の総所得に算入する。

3.租税回避の定義

その後、多くの国がタックス・ヘイブン対策税制を導入したが、制度の趣旨・目的、内容はさまざまである

外国子会社がその所得を親会社に配当するか否かは各企業に委ねられている。配当しなければ、租税効果としては親会社に対する課税は繰り延べられることになる。そのすべてを「租税回避」だとはいえない。

私的自治の原則から世界のどの国・地域に子会社を設立することも合法的に認められている。そこでの税負担が日本に比して著しく低い国・地域に子会社を設立したという理由だけで、懲罰的税制を課すこともできない

では、タックス・ヘイブンに設立した外国子会社に所得を移転し留保するにあたって、どのような場合に租税回避となるのか。

日本の税制(旧措法66の6④)は、①子会社が独立企業としての実体を備えていない場合、②該当国において事業を展開する経済的合理性が認められない場合、など5つの場合について合算課税を行うこととなっている。


ということで、ここまでが長い「はじめに」だ。ここから本文に入る。