コスタ・コンコルディアの“引き起こし”

まさに引き起こしという言葉がピッタリだ。英語ではRecovery。 CNN 日本語版では引き上げと言っているが、これはタイタニックや戦艦「大和」を海底から引き上げるイメージだ。

一番の興味は、“どうやって”ということだ。もう一つ“なぜ”ということもある。

各紙報道をまとめてみる。

コスタ・コンコルディア号

総トン数11万4000トン、全長約290メートル。昨年1月に座礁・転覆し32人の死者。2人の遺体が今も船内に閉じ込められている。船体は半分海に浸かった状態で沿岸の岩の上に横倒し(約80度)になっている。

引き起こし作業

AFPで素晴らしい絵入り解説がある。

①座礁した船体の乗る斜面の下方、深さ30メートルに、引き上げ台を設置した。船の全長290メトルに対し40メートル平方の広さだからかなりピンポイントである。

②船腹につけたタンク・バラストの重みと引き上げ台と船体の間に張ったケーブルの引張りにより、船体を引き起こしつつ沈ませる。

③船腹の体側(座礁面)にもタンクを装着し、水で満たす。

④両側のタンクの水を同時に抜いていくと船体は浮上する。

という具合だ。ちょっとやばいけど転載する。

https://livedoor.blogimg.jp/shosuzki/imgs/1/2/12c49993.jpg

同様の解説図は下記にもある。こちらのほうが大きくて分かりやすい。

http://edition.cnn.com/2013/08/22/world/europe/costa-concordia-salvage-interactive/index.html



船体の海側に特別の装置(引き上げ台)が設置された。建設に3万トンの鋼鉄と1万8千トンのコンクリートが使用された。作業には約500名が参加した。

船体の完全引き起こしの前には65度まで引き起こす必要があった。そのために16日朝より作業が始まった。船体は夕刻までに約15度引き起こされた。

夕方から上向きになった側の船腹に取り付けた金属製の容器への海水の注入が始まった。船体は海水の重みによりずり下がり、作業台の上に着地した。

17日午前4時、深さ30メートルの海底に設置した土台の上に船体を載せる作業が無事完了。ここまで作業開始から19時間。

17日朝までに、船体は完全に作業台に乗り、岩から離れた。ただし海上に顔を出しているのは3,4回あたりのデッキより上の部分。

ヴィデオは下記

http://www.cnn.co.jp/video/11640.html

なぜ引き起こしを選択したか

引き揚げ作業は過去最大規模の約8億ドルをかけて実施された。これは建造費(約6億ドル)より高い。通常は船体を爆破したり解体したりする方がコストも安く上がるが、船内に有害物質が残っていることと、まだ2人が見つかっていないため引き起こしとなった。

今後、来年春までジリオ島近くに置かれ、その後、ピオンビノに曳航され、5年後までに解体される予定。