エジプトの経済指標を見ていて思ったのだが、ネガティブな表現が多すぎる。
可耕地は狭い、人が多すぎる上に増え過ぎる、サービス産業ばかりで生産的産業は何もない、慢性の貿易赤字で、放漫財政が首を絞めている、といった調子だ。
これではお先真っ暗だ。
しかし人材は中東全土から集まってくる。GDPは少なくともリーマンショック前まではかなりの伸びだ。

つまり、第一次産業も第二次産業もなくても、エジプトは別に困らないのだということになる。
これは都市国家の特徴だ。考えてみれば香港もシンガポールもそうやって発展している。

エジプト(というよりおそらくはカイロなのだろうが)が国境を超えて中東の商業センターの役割を果たしているとすれば、それで計算は成立するのではないだろうか。

エジプトは地理的優位性、労働力、水、電力などが安いことなど優位点を多く有している。EU、湾岸諸国等との経済協定によりゼロ関税で輸出できる。また、若年層が多い人口構成も魅力の一つである。
エジプト地場企業の多くはR&Dにかける予算がなく、自社で技術開発を行う限界がある。
一方、エジプト・アラブ特有の商習慣を知りつくしていることは最大の長所であるから、欧米など先進国は中東進出の拠点をカイロに置くほかない。
政変後のエジプト経済・政治状況)

ただ都市国家としてのカイロはセキュリティーを必要とするので、コストとしてエジプト全土の統治業務を負担せざるをえないという構造で捉えると、分かりやすいのかもしれない。ただコスト意識があまりにも徹底し過ぎているが…

ただこれは諸刃の刃ともなるので、都市が発展すればするほど国内リスクは高まる。とくに議会制民主主義が真の意味で実現してしまうと、都市対地方という矛盾が露呈し、たちまちのうちにカオスがもたらされる。

最もドラスティックな解決法としては、シンガポールが国家として分離独立したかつてのマラヤのように割れてしまえばよいのだろうが、エジプトははるかに均質な社会である。異端としてはせいぜいキリスト教・コプト教かユダヤ教
くらいだ。

都市対地方という矛盾の根本的な解決にはならないが、当面は、地方中都市(ミニ・カイロ)の育成によって、農村部の過剰人口を吸収し、地方の底上げを図るくらいしか道はないのではないだろうか。