資本論第3部の斜め読み その5

このあたりで、第3部の全体的構成を振り返る。

第三部全体に付けられた題名は「資本主義的生産の総過程」である。

ここまで読んできた第一篇は、「剰余価値の利潤への転化と剰余価値率の利潤率への転化」という題であり、要は 利潤率=利潤÷(対物コスト+人件費)の説明であり、利潤というのが剰余価値と同一であることの原論的論証である。

第二編からがいよいよ本番で、普通の経済学の教科書はここから始まる。


第二篇 利潤の平均利潤への転化

平均利潤率は、これまでの商品の価値をめぐる議論よりはるかに複雑である。

「利潤率の均等化」を議論するためには、商品“価値”だけではなく商品“価格”を扱わなければならない。そのためには市場と競争を前提としなければならない。

第8章 生産部門の相違による資本構成の相違と、それにもとづく利潤率の相違

「どのようにして一国のなかで一般的な利潤率が形成されるのか」が基本であり、それは差異があることを前提としている。ここでは、なぜ差があるのかを明らかにする。

ということで、マルクスは以下の二つを取り上げる。

①諸企業における資本の有機的構成(可変資本と不変資本の割合)の相違

②諸企業における資本の回転期間の相違

ただ実際には①が問題で②は無視してもあまり本筋には関係しない

第9章 一般利潤率(平均利潤率)の形成と、商品価値の生産価格への転化

ということで、マルクスはまず資本の有機的構成の問題から着手する。

有機的構成とは生産手段の量と労働力の割合である。それは生産手段の価格によっても規定される。

人件費率の高い産業では不変資本に対する可変資本の比率が高いから剰余価値率は高くなる、したがって利潤率も高い。化学産業のような設備産業では利潤率は低くなる。組み立て産業なら材料の仕入れが資本の大部分を占めることになる。

ここからマルクスは次の結論を引き出す。

1.個々の生産部門で資本の有機的構成が違っているから、生産される剰余価値の量も非常に違ってくる。

2.したがって利潤率(p’)も、元来は非常に違っている。

3.それらは競争によって平均利潤率(m-P’)に均等化される。

4.費用価格(k)+平均利潤率に費用価格を乗じたもの(k x m-P’)が商品価格となる。

実際の価格はこれを商品の回転数で割る必要がある。

それゆえ、それぞれの生産部門の資本家は、生産された剰余価値(利潤)を手に入れるのではなく、社会の総利潤の内から均等に分配された利潤(剰余価値)を手に入れるだけである。


ずいぶん手を加えたが、非常に要領の悪い書き方で、それでも分からない。

説明すると以下のとおり

個別の資本にとっては、自分の会社が生産過程で実現した剰余価値ではなく、市場に規定された平均利潤(m-P)が配分されることになる。

前にも出てきたが、資本支出の観点(すなわち見かけ上)からは

商品価値: W = k+p

である。

つまり費用+利潤である

しかし商品「価格」は費用価格+平均利潤(m-P) であり、

W = k + m-P となる。

そして平均利潤は 費用価格 x 平均利潤率 だから。

これを数式化すると

W = k +(k x m-P’)=k x (1+m-P’)

となる。


それでは平均利潤率(m-P’)は何によって決まるのか。

それは生産諸部門の利潤率の加算平均による。

社会全体では

p =Σ(k x m-P) となる

しかし個別企業にとっては、そうは行かないことになる。「一物一価の法則」が、生産条件の相違による個別価値の相違を乗り越えて貫徹するのである。

市場価値の定義: この「一物一価の法則」を通じて実現される平均商品価値を、その商品の市場価値という。

市場生産価格の定義: 市場価値はさまざまな要因によって変動するが、結果的に比較的長期にわたり安定する。これを市場生産価格という。