軍縮・不拡散

国連における軍縮・不拡散への取り組み

平成25年2月

1.国際連合による議論

 国際連合は、1945年の創立以来、軍縮問題についても積極的に取り組んできた。

 冷戦時代は、非同盟運動諸国(NAM)のイニシアチブによって、1978年、1982年、1988年と計3 回の国連軍縮特別総会が開催されたが、全体としては限定的であった。

冷戦終焉後は、包括的核実験禁止条約(CTBT)の国連総会における採択(1996年)など、国連総会の場を通じて軍縮・不拡散の声が上がっている。

安全保障理事会も1992年1月に軍縮・不拡散 の重要性を強調する議長声明を発出、2004年4月には不拡散に関する安保理決議第1540号を採択した。

2006年以降、北朝鮮及びイランの核問題について、制裁措置を含む決議を採択するなど、安保理が果たす役割は近年急速に増大している。

 

2.国連総会第一委員会と国連軍縮委員会

 国連において軍縮・不拡散分野の問題を取り扱うのは、総会開催時の「国連総会第一委員会」と、総会の枠外でアドホックに議論する「国連軍縮委員会(UNDC)」の二つである。

(1) 国連総会第一委員会

 1978年の第1回国連軍縮特別総会は、「軍縮問題及び関連する国際安全保障問題のみを取り扱う」専門機構として「第一委員会」を位置づけた。第一委員会では毎年数多くの軍縮関連の決議が採択され、その動向は軍縮・不拡散の流れを見極める上で極めて重要である。

 日本は1994年に(悪名高い)「究極的核廃絶決議案」を提出した。2000年には、核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議の成果を踏まえて(踏まえざるを得なくなって)、全面的核廃絶に至るまでの具体的道筋を示した決議案「核兵器の全面的廃絶への道程」を提出した。 2005年には、「核兵器の全面的廃絶に向けた(廃絶させないぞという)新たな決意」を提出している。

(2) 国連軍縮委員会(UNDC)

 設立当初に、国連は軍縮問題について研究・勧告を行うために「原子力委員会」と「通常軍備委員会」の2つの委員会を設置した。

1952年の第6回国連総会において、両者の業務を統合し、新たな軍縮交渉を行う機関として国連軍縮委員会が設置された。しかしこの委員会は長い間休眠状態にあった

1978年の第1回国連軍縮特別総会において、国連総会の補助機関として、現在の国連軍縮委員会を設立することが決定された。

 国連軍縮委員会は毎年、4~5月の時期に約3~4週間の会期でニューヨークにて議論を行っている。

 2009年からは「第4次軍縮の10年宣言」及び「核軍縮及び核兵器不拡散の目的を達成するための勧告」について議論が行われている。

3.安全保障理事会

 安全保障理事会は、2004年4月に、不拡散に関する安保理決議第1540号を全会一致で採択した。

同決議は、非国家主体への大量破壊兵器等の拡散を防止するために、各国政府に大量破壊兵器等の拡散を禁じ、厳格な輸出管理制度を策定するよう求めている。

 2009年9月、核不拡散・核軍縮に関する安保理首脳会合が開催され、「核兵器のない世界」に向けた決意を表明しつつ、核軍縮、不拡散、原子力の平和的利用、核セキュリティ等を包括的にカバーする安保理決議第1887号が全会一致で採択された。

 2006年7月、安保理は北朝鮮によるミサイル発射に対して、安保理決議第1695号を全会一致で採択した。

同決議は北朝鮮に対し、弾道ミサイル計画活動の停止等を要求するとともに、すべての国連加盟国に厳格な輸出管理等を要求した。

同年10月、北朝鮮の核実験実施発表に対しては、決議第1718号を全会一致で採択した。

同決議は、北朝鮮に対し核兵器及び核計画の放棄等を要求。すべての加盟国が、核・ミサイル関連の特定品目等の供給防止、奢侈品の輸出禁止等を行うことを要請した。

2009年5月 25日に北朝鮮は、再度核実験を強行した。これを受けて、安保理は北朝鮮を強く非難し、追加的な制裁措置を課す内容の決議第1874号を 全会一致で採択した。

同決議は、北朝鮮に対する武器禁輸の範囲を拡大、禁輸品目の積載が懸念される北朝鮮出入船舶の貨物検査等を各国に要請している。

2006年7月、イランに対して、安保理は、すべての濃縮関連・再処理活動の停止を義務付ける安保理決議第1696号を採択した。

同年12月には安保理決議第1737号により、濃縮関連・再処理活動に関する物資、人、資金に関する制限が課せられた。2007年3月の安保理決議第1747号では資産凍結対象等の追加や武器等の取引対象の拡大が定められた。2008年3月には決議第1803号が採択され、イランが安保理決議を遵守していないことを受け、資産凍 結対象等のさらなる追加やイランへの供給禁止品目、技術の拡大等の措置を追加した。

4.国連軍縮諮問委員会

 国連軍縮諮問委員会は、国連事務総長の諮問機関である。軍縮問題一般につき事務総長に直接助言を行う。また、ジュネーブの国連軍縮研究所(UNIDIR)の運営を監督する機能も併せ持つ。

 1978年の第1回国連軍縮特別総会でワルトハイム国連事務総長が提案。30人の有識者より構成される軍縮諮問委員会が設置された。当時の委員会は1981年にその任務を終了した。1982年、第 37回国連総会決議によって同委員会の復活が決定された。1989年に現在の名称に改定している。

事務総長が任命する委員約20名から構成され、委員は個人の資格で参加する。NPT運用検討会議に向けた概念的問題についても討議されている。

5.国連軍縮会議

 1988年に設置された国連アジア太平洋平和軍縮センターの主催する会議。アジア・太平洋地域において、軍縮・安全保障に関する対話を行う場を提供する。世界各国の政府高官や軍縮問題の専 門家などが、個人の資格で参加し、毎回のテーマに沿った討議を行う。条約交渉や決議の採択などはない。

1989年以来毎年、日本政府の協力の下で、日本国内の地方都市で開催されている。

6.国連ミサイル専門家パネル

ミサイル問題をあらゆる角度から検討するために設置された政府専門家パネル。ミサイルに関する国連総会決議(イラン提案)に基づいて、2001年以降三回にわたり断続的に開催された。参加国の立場・思惑の相違により、取り組むべき方向性を提示するには乏しい内容となった。