「バーナンキの変節」という言葉が目に止まった。
赤旗の書評欄、「21世紀型世界経済危機と金融政策」という建部正義さんの本を、静岡大学の鳥畑さんが評した文章の中に出てくる。

ほんの短い一節で、しかもアベノミクス批判の文脈の中での使用だけに、多少意味が読み取りにくい。

この本の補論の中に「バーナンキの変節」を批判するところがあるらしい。
そこで、「生粋の外生的貨幣供給論者であるバーナンキが、自身がFRB議長になったら、実際に展開したのは内生的貨幣供給論にもとづく金融政策だった」とし、これを「バーナンキの変節」と断じているらしい。

建部さんが言う外生的というのは、「通貨供給そのものが借入受容を生み出す」という理論で、内生的というのは「借入受容があって通貨供給は増える」ということを意味する。つまり、マネタリストとケインジアンの対立の亜型みたいなものだ。

建部さんは当然のごとく、生粋の内生的貨幣供給論者であるから、この「変節」は反語である。

とすると、バーナンキがFRB議長に就任後にとった政策は、彼本来のスーパー・マネタリストとしてのそれではなく、ケインジアンに近いものだったということになる。

本当にそうなのか、いささか疑問である。我々には3次に渡るQEが、バーナンキの政策の代名詞となっている。
QEにもかかわらず、バーナンキは変節したのか、それともQEそのものが変節の証なのか、そのあたりは定かではない。

いづれにしても、これは大きな議論の対象となるだろうと思う。