日本における仏教諸宗派の分布 ―仏教地域区分図作成の試み―

というページを見つけたので、少し調べてみた。ここでは日本の仏教各宗派を①天台・真言系、②浄土系、③禅系、④日蓮系の4つに大別しており、整理しやすい。

全国の寺院の宗派別集計で見ると、①浄土系42%、②禅宗系29%、③真言系21%、④日蓮系8%となっている。ただしこれは昭和34年のデータにもとづく数字であり、その後相当数が淘汰されている可能性はある。

まず天台・真言系が5割を越す県は茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉の関東地域。そしてなぜか岡山と徳島が多い。とくに徳島は68%と圧倒的な比重を占めている。

真宗をふくむ浄土系が5割を越すのは北海道、富山、石川、福井、岐阜、愛知、三重、滋賀、大阪、奈良、広島、山口、香川、福岡、熊本、鹿児島となっ ている。富山、石川、鹿児島では寺の3/4が浄土系となっている。北海度で高いのは石川・富山からの移民が多いのと、開拓期に本願寺が開拓の先頭に立った ためであろう。

禅宗系が5割を越すのは、岩手、宮城、秋田、山形の東北4県、山梨、静岡の中部2県であり、とくに静岡の69%が際立つ。大阪、奈良など近畿で1割に満たないというのもひとつの特徴である。

日蓮宗は千葉、東京、山梨で20%を超えるが、ほかはほとんどが10%以下であり、石川でも7%にとどまり静岡の16%を大きく下回る。

5割を越す宗派がない県は青森、福島、東京、神奈川、新潟、長野、京都、兵庫、和歌山、鳥取、島根、愛媛、高知、佐賀、長崎、大分、宮崎であり、浄土系と禅宗系が喰い合いしている場合が多い。

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私のような縁なき衆生にとっては寺の数だけで十分ごちそうさまだが、関係者にとっては、信徒数で比較しなければ意味がないと思うかもしれない。

この論文はご親切にも信徒数まで出してくれている。それも不肖の信徒までふくめた数とコアーな信徒である檀家数とに分けてだ。そこで檀家数で各宗派の分布を見てみる。

そうすると浄土系が俄然強くなる。新潟、京都、和歌山、島根、佐賀、長崎、大分、宮崎が加わる。西日本総なめである。ただしこれは大正11年のデータである。

この論文ではご親切にも明治12年のデータと比較をしてくれている。これで見ると、明治の初期には天台・真言系がかなり多かったのが、高野山の大火のあとで寺社を整理しているようである。

例えば和歌山県では明治初期には天台・真言宗系寺院が1千あまりを数えたが、10年後には750まで整理され、その後も漸減し明治末に浄土系を下回るようになった。そして昭和初期には二位の座も禅宗に明け渡すようになる。

それにしても、日本史の授業ではずいぶん一向宗や日蓮宗の階級性とか戦闘精神が強調されていたが、どうも「日本人にとって宗派がなんぼのものかいな?」という感じがしないでもない。

忍者寺の解説にも、一向一揆に対抗して日蓮宗を押し立てたと書いてあるが、数字を見れば何ほどのこともない。大体が前田家にしてからが、江戸の回向寺は禅宗だ。

あまり、中世の時代を見るのに宗教性は重視しないほうが良いのではないだろうか。