文化欄に面白い記事が載っていた。
大日方純夫さんという早稲田の先生が書いた文章である。
結構長い見出しで、

第一次安倍内閣の「日中歴史共同研究」は語る
日中戦争は日本の侵略戦争


というものだ。かなり苦し紛れの見出しだな。

見出しに劣らず、本文もファクトが詰め込まれすぎていて、いささかややこしいので、要点を箇条書きにしておく。

1.2006年、第一次安倍内閣は、「日中の歴史問題については専門家の判断に委ねたい」とし、日本・中国間の歴史共同研究をスタートさせた。

2.共同研究のスタートにあたっては、日中の首脳が決定し、国家レベルで公式の歴史対話として推進された。

3.この内、近現代史分科会の日本側委員には北岡伸一、小島朋之、波多野澄雄、坂本一哉、庄司潤一郎らが選任された。

4.2010年に、研究の成果として、「日中歴史共同研究第一期報告書」が発表された。

5.この報告書の各論文は、日本が侵略戦争を行ったということを、共通の前提にしてる。

という経過を踏まえて、最近の安倍首相の発言の無責任ぶりを指弾する、という論理構造になっている。

これが主筋なのだが、文章はこの論理を、北岡座長の発言で補強している。なぜ北岡座長の発言を重視するかが分からないと、何のことやらわからないだろう。

ウィキペディアで見ると、この北岡という人物、親米保守の論客で、その筋では知られた人なのだ。

たくさんの肩書きから、たとえば、日本の集団自衛権の保持の可能性について考える安倍首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」有識者委員、というのを持ちだしただけでも、大方の想像はつくだろう。

昭和42年の東大入学らしいが、あの頃こういう人物もいたのだ。

ということで、北岡座長の発言については稿を改める。

ついでにいうと小島朋之氏は中国研究の専門家で、台湾の李登輝元総裁とも太いパイプがあったようだ。波多野氏は外務省の『日本外交文書』編纂委員長を勤めた人物。坂本一哉氏は日米同盟推進の立場で、「論壇で積極的な発言を行なっている親米保守の一人」とされ、北岡の子分格で動いているようだ。庄司氏は防衛省の研究室用という肩書きである。

要するにそういうバイアスがかかった委員会なのだ、というところにミソがある。つまり、大日方さんのこの文章はオールスターのような直球勝負ではなく、ぐにゃりと曲がる変化球なのだ。