アベノミクスの罠

高田太久吉さんの寄稿で3日の連載囲み。12日分が本論。

アベノミクスには三つの罠があり成功の見込みはないというのが論旨。

そこで三つの罠とは、国債の罠、流動性の罠、「約束と期待の罠」ということだ。

これだけ見れば、「そうね」とやり過ごしてしまいそうだが、ちょっと切り口が違う。高田さん独特の論理が展開されていて面白そうだと読み始めた。

1.国債の罠

インフレ率2%になれば、国債の利率も2%以上に引き上げられる。

国債というのは、たとえば償還時に1万円の国債なら〇〇円x(1+利率)=1万円となるような額で売り出される。5%なら1万円÷1.05=9524円だ。国債利率が低いとき買った人は、その分が損になる。

大手銀行の保有する国債の目減り損は6兆円を超えると推定される。

それが国債の罠だというにはもう少し論証が必要と思うが…

高田さんは、もうひとつの国債の罠を提示している。

利子率が高くなれば、国債の新規発行は不可能になる。また国債の買い替えもできなくなる。

たしかにそのとおりだが、何故そうなるのかのメカニズムを明らかにし、それが必然的なジレンマであることを示さなければならない。

ということで、着想は新鮮だが展開は不十分。

一般的にはインフレによる国債価値の下落と、無制限発行による信用の低下の相乗効果によりスプレッドの拡大からソブリン危機へという流れを指摘しておけば十分であり、そこには罠というほどのパラドックスはない。

2.流動性の罠

金利ゼロの状態で金融緩和をしても資金は市場に回らず、いずれ金融バブルや不動産バブルを引き起こす。

これはそのまんまの話で、流動性の罠の説明にはなっていない。「流動性の罠」はクルーグマンの言い出した言葉で、クルーグマンについては以前、次のように書いた。(2013.1.16 クルーグマンの財政政策論

クルーグマンは財政出動論者と言えます。その限りでは安倍首相と同じです。

彼の財政出動論は、現下の不況がデレバレッジング・ショック(資金回収パニック)によってもたらされたものであるとの評価のもとに展開されています。

そして、貯蓄(節約)のパラドックス、精励のパラドックス、伸縮性のパラドックスという特徴づけを行います。

そして最大のパラドックスである財政政策、すなわち不況打開・雇用確保と財政再建の矛盾に切り込みます。

内需拡大という点では、我々とも一致しています。しかし財政出動は、その内容を問わなければ無意味でしょう。クルーグマンのアベノミクスへの「評価」は、彼自身の理論の危うさの反映かもしれません。

3.「約束と期待」の罠

「2年以内に物価上昇2%」という約束と、それに対する期待は、もしそれが達成されなければ市場の信頼を失うだろう。金融市場は方向性を失って大混乱になる。

というのが高田さんの「予言」だが、これのどこが「罠」なのか分からない。

90年代には日本のバブル崩壊が、アジア危機を引き起こし、さらにロシア、中南米、最後はニューヨークまで波及し世界経済に大混乱を与えたのです。

これだと日本のバブル崩壊が90年代後半の世界金融危機をもたらしたことになる。大胆な仮説ではあるが、一般的な評価といえるか。もう少し論証が必要だろう。


この間の、アベノミクスはマネタリズムとサプライサイド・エコノミーとケインズのごたまぜだという説といい、最近の経済学者の論理はちょっと荒っぽい。

このような短い紙面で、理非曲直を明らかにするのは難しい話だが、もう少し素人にも納得できるような展開を望みたい