ちょっとしつこいが、同じサイトで下記の記事もあった。

安倍総理、毎日新聞に掲載された田中均氏のコラムを批判(2013.6.12)

というもので、

安倍総理の外交について元外交官の田中均氏が語った毎日新聞の記事について安倍総理の反論。

「彼は被害者の皆さんの「日本に残って子供たちを待つ」との考えを覆してでも北朝鮮の要求通り北朝鮮に送り返すべきだと強く主張しました。」

「あの時田中均局長の判断が通っていたら5人の被害者や子供たちはいまだに北朝鮮に閉じ込められていた事でしょう。」


これが6月12日のツイッターの内容だ。そういう議論は当時からあった。その延長かと思ったが、実際に田中さんの記事を読むと、まったくこの批判は見当違いであり、そもそもこのような内輪の情報を公にすること事態の是非が問われかねない内容である。

田中さんの記事はまだ生きている(7月8日現在)

以下要旨を箇条書しておく。

右傾化問題

安倍政権ができ、アベノミクス効果などで日本も政治の停滞を抜け出すのではないかという期待の声もある。

一方、日本が自己中心的な、偏狭なナショナリズムによって動く国だというレッテルを貼られかねない状況が出てきている。

日中、日韓関係が厳しい状況にある中、中韓に日本を攻撃する口実を与えてしまっているという面はある。

米国の東アジア観

中国を大事にする、しないではなく、東アジアを安定的な地域にしたいと考えている。

日本が中韓との関係で孤立しているように映っている。それは米国の国益にもそぐわないと認識されている。

安倍首相の路線

(目下は)侵略の定義とか、村山談話、河野談話、憲法96条の改正などで現実的な道をとろうとしていると思う。

しかし、あまりそれを繰り返すと、参院選以降はまた出てくるのではないかとの印象を生じる。それが日本の国益のためにいいかと。

北朝鮮問題

拉致問題は極めて重要で、日本が自ら交渉し解決していかなければならない。だが、核、ミサイルの問題は日本だけでは解決できない。拉致と核、ミサイルを包括的に解決するのが日本の政策なのだ。

対中外交

価値観外交と掛け声をかけるのは中国を疎外することになる。正しいとは思わない。声を大にして「けん制しますよ」というのは外交じゃない。

と、きわめて穏健かつ常識的なものだ。

これに対する「反論」が上記のものだとすれば、その異常ぶりは明らかだ。

外交の意志決定過程を個人名まで挙げてぶっちゃけることが、はたして日本のためになるのかは疑問である。

田中氏は個人としてではなく、外務省の官僚として、国家を代表して交渉にあたっていたはずだ。その主張がどうであれ、個人名まで挙げて攻撃されるべきいわれはない。

しかもその内部情報が議論の本筋とは関係なく、ひたすら田中氏の名誉を失墜させるために利用されているというのが異常だ。

安倍首相は当時官房長官としてこの議論に関わった。おそらくその職務において知り得た情報であろう。

このような首相のもとで、外交というものが成立しうるのか、はなはだ心もとない。