NHK交響楽団の定期演奏会で、中国の作曲家タン・ドゥンの曲を世界初演したそうだ。
その題名は「女書~13のマイクロフィルム、ハープ、オーケストラのための」というもの。
名前だけでも、とてもアトラクティブだ。

女書とは、かつて中国で女性が漢字の読み書きを禁じられたとき、女たちの間でひそかに作られ、伝えられた文字とそれによる歌のこと。
絶滅寸前の文化だが、現在、湖南省(タン自身の出生地でもある)に伝承可能な高齢女性が6人いるという。
タンはフィールドワークを通してその文字と文化を学び、吟唱や民謡、映像などを収集。それらを管弦楽に融合させて作ったのが、この映像付き交響曲である。


赤旗の記事は、音楽会の演奏評のコラムであり、ずいぶん短い文章に要領良く書かれているが、さすがに全貌はつかめない。

とりあえず、NHKのホームページから情報を集めてみた。
そうすると、「13のマイクロフィルム」というのはおおげさで、タン・ドゥンが現地を訪れた時のスナップ写真を曲の間に背景に映写するというだけのことのようだ。

どうもタン・ドゥンは文革期の下放青年だったようである。それで農村での生活のあいだに女書の存在を知ったらしい。
現在は上海とニューヨークを股にかけ国際的な活躍をしているようだが、この女書が気になっていて、現地に取材旅行をし、伝承者を発掘したという顛末のようだ。

次にNHKのページにリンクが張ってあるタン・ドゥン本人のページに行ってみた。
表題は
Saving the disappearing culture of Nu-Shu
Creating a future from the past
(The Music Journey on Nu-Shu by Tan Dun)

訳すほどのこともない。温故知新という所か。
女書

これが女書。タン・ドゥンは
The Nu Shu characters look like mosquitoes, like music notes flying along on the wind. So graceful, like dancers
と表現している。

タン・ドゥンにはすまないが、日本のひらがなのほうがはるかに美しい。蚊ばかりでなく蝶も鳥も揃っている。

私としては、これらの文化が文化大革命をくぐりぬけ、密やかに生き残ったこと、そして今静かに息を引き取ろうとしていること。それをかつての下放青年が探り当て、みとろうとしているところに、ドラマを感じてしまうのである。
それも文化大革命の痛ましい外伝の一つであろうか。