カンテルリのフランク交響曲がいい
普段はやらないのだが、この音源がべらぼうな高音質なので、間違えないようにあげておく。

カンテルリといえば随分昔の演奏家だと思っていた。高校の頃、友達の家でブラームスの1番を聞かせてもらったことがある。中身はほとんど憶えていない。なにせ友達といっても女性だ。松林の中の洋館、じゅうたんにスリッパなど日頃縁遠い環境で、ため息ばかりついていたような気がする。

そのカンテルリがステレオ録音していたとは知らなかった。演奏はこの曲の持つおどろおどろしさを取り去って、美しさを引き出しすことに専念している。多重・近接マイクのせいもあるのだろうが、時によって室内楽を聞いているような雰囲気にさえなる。この上なくチャーミングな演奏だ。

フランクの交響曲はイヤミな演奏が多い。スコアーを見るとそんなにエグい曲ではないはずなのだが…

バーンステインの演奏はそういう嫌味の極致だ。マゼールの演奏も同断。カラヤンも似たようなものだ。この曲は強奏してしまうと音が濁る。そういうふうには出来ていないのだ。あくまで主旋律をレガートで引き立たせ、他の音は脇役に回らなくてはいけない。ティンパニーやトランペットが辺りを圧するような演奏などとんでもないのである。

グイド・カンテルリはイタリアのレジスタンスの英雄。奇跡的に死線を潜り抜けて来た人だ。それでトスカニーニに可愛がられ、その引きでスカラ座管弦楽団の首席指揮者にまで登り詰めた。いよいよこれからという矢先に飛行機事故で死んでしまった。

そういう人かと思ったが、この演奏を聞いて印象はガラッと変わった。指揮者としての能力も相当な人だ。かなり強情な人であることは間違いないだろう。