「アキレスとカメ」という話があって、俊足のアキレスが1メートル先を歩く亀を追い越せるかという問題である。アキレスが1メートルを走って亀に追いつい たとき、亀は1センチ前に進んでいる。「されば」とてアキレスが1センチ進んだとき、亀は0.1ミリ先に進んでいるという具合で、何時まで経ってもアキレ スは亀を追い越すことはできないというパラドックスである。

私はこのパラドックスの解を随分もとめたものだ。ヘーゲルの解説本を読むと、 彼もけっこう悩んだらしい。学校の先生は横軸に時間軸、縦軸に累積走行距離をおいて図を描き、アキレスと亀の走行距離はこの通り交わるから、「追いつけな いという話は成立しない」と否定してみせたが、それでは論理的否定にはなっていない。考え方を変えただけだ。だから「ウム、そういう見方もあるね」と受け 流されるだけだ。

このパラドックスは片対数グラフの上に描かれている。横軸(t軸)が数直線ではない。ここにミソがある。そのグラフの上に反比例曲線が描かれているのだ。

おそらく、このグラフの最大の問題は、時間がいつか最終的に止まってしまうことにある。これは時間の流れは、それが一定かどうかは別にして、止まることはないという原理に違反しているので、成立し得ないということになるのではないか。

ヘーゲルはライプニッツの数学を使ったようだが、積分でもうまくいかないだろうと思う。こういう問題は、五目並べで言うと、相手を三々などの禁じ手に追い込むのが一番だ。理論経済学でよくやる手である。

ただ、この手は勝ち味がスッキリしないのが難点である。