YouTube で聞けるジョージ・セルの高音質音源

高音質というのは最終的に我々の耳にどのくらいの音質で入ってくるかということで、うp主次第である。元の録音が悪ければそれ以前にペケである。とくに放送のライブ演奏をエアチェックしたものの中にはひどいものもある(バイエルンは比較的安心できるが、オランダ放送協会やフランクフルト放送の音源には要注意だ)。

録音が古くても音は悪い。しかしセルの場合、55年以降の録音であればまずまず聞ける。ただしクリーブランドを振った場合に限る。客演の場合は基本的にペケである。クリーブランド就任前のいわゆる「歴史的名盤」には目下のところ興味はない。

うp主が手持ちのビニール盤を再生してアップしてくれたものがある。一般にプチノイズ以外は高音質である。しかし高音部の頭打ちにはビニール盤としての限界がある。イコライザーで100~150サイクルあたりを少し持ち上げると、聴きやすくなることがある。

最近、60年代の音源がいくつかリマスタリングされて発売されているようだ。おそらくかなりやばいと思うが、いくつかそれらしい音源が聞ける。

 

①ベートーヴェンの交響曲第2番、第5番

第5番は55年録音だそうだが、おそらくリマスターしたのであろう、ギスギスはしているがかなりのハイファイである。Audacity で擬似ステレオ化するともう少し聴きやすくなると思う。2番は最近の録音と比べても遜色ないレベルだ。

②ブラームスの交響曲第4番

多分私の一番好きな交響曲。セルかクライバーかということになるだろう。音質も最高レベルだ。

③ハイドンの交響曲第93番、94番、97番、99番

ベートーヴェンのようなハイドンだ。新しくはないが良い録音で、クリーブランドの弦合奏の実力が堪能できる。

④マーラーの交響曲4番と9番、大地の歌(終楽章のみ)

ライブ録音で聞けるが、マイクのセッティングが悪いのか、ミキシングが悪いのか、弦合奏が聞こえない。これではクリーブランドの魅力が半減だ。おすすめはしない。

⑤メンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」

絶品の演奏だが、第1,第4楽章しかアップされていない。音質も冴えない。しかし第4楽章は思わず息を呑む。おそらくセルはメンデルスゾーンなら地で勝負できる人だろうと思う。

⑥モーツァルトの交響曲第35番「ハフナー」

クゴモッた録音で爽やかではない。ほかに39番、40番、41番が聞けるが、いずれも音質は良好とはいえない。あれだけハイドンの音質がいいのに不思議だ。

⑦モーツァルトの協奏交響曲(2,3楽章のみ)、クラリネット協奏曲

いずれも楽団員が独奏者を務めており、セル指揮クリーブランド室内管弦楽団の演奏といってもよい。演奏は極上だが、きわめてデッドな環境で近接マイク。眼前に演奏者がいるような雰囲気。

⑧R.シュトラウスの「死と変容」と「メタモルフォーゼン」

いずれも演奏は絶品。録音は、とくにメタモルフォーゼンはライブ録音で戦前のSP並み。

⑨R.シュトラウスの4つの最後の歌(ニコニコ動画)

シュヴァルツコップの歌に伴奏をつけている。オケはベルリン放送。シュヴァルツコップのご指名だったのかしら。

いろいろと制約が多い中での演奏だが、とにかくセルはシュトラウスを得意としていることが分かる。

⑩シューベルトの未完成とザ・グレート

セルはシューベルトが苦手だろうと思う。シューベルトをベートーヴェンにしちゃってはまずいと思うよ。シューベルトというのは劣等生というか登校拒否というか、そういうめそめそした優しさがないと染みて来ないように思う。セルのピアノ、ブダペスト四重奏団との「鱒」は聞かないほうがいい。

⑪シューマンの交響曲第1番、第2番、第3番、第4番、ピアノ協奏曲(この5曲はニコニコ動画だったかもしれない)

全曲すべて最優秀音質。第4番はフルトベングラーで愛聴していたが、こちらのほうが音質ははるかに優れている。

ピアノはセルお気に入りのフライシャー。

⑫ワーグナーの管弦楽集

ジークフリート牧歌、夜明けとラインへの旅、ジークフリート葬送音楽が聞ける。1956年の録音ということだ。元音質がモノーラルでさすがに聞けない。「魔法の火の音楽」はステレオだがUP音質が壊れている。ライブの録音でタンホイザー序曲が聞けるが貧音質。これなら今まで通りクレンペラーを聞いていたほうが良い。これからのアップに期待。

⑬ドビュッシーの海(ニコニコ動画)

ヴィニール盤をアップしたもの。かなり盛大にプチ・ノイズが入るのと高音が堅くやせているため、美音を楽しむにはいまいちの感。

⑭ラヴェルのダフニスとクロエ第二組曲

意外と言っては失礼だが、これがいいんですね。音質も優秀。長ーいクレッシェンドが「おっ、おっ、おっ」と身を乗り出させるが、これはオケの実力か。

⑮チャイコフスキーの交響曲第5番、第6番

ヴィニール盤を再生してアップしてくれている。良いオーディオをお持ちのようで、プチ・ノイズを除けばヴィニール盤とは思えない音だ。第6番はライブ録音。近接マイクの音がでか過ぎで、クリーブランドの音は聞けない。

⑯ドヴォルザークの交響曲第7番、第8番、第9番

いずれも58年から59年にかけて録音されたステレオ初期の演奏で、定番中の定番。音も昔ながらのおなじみの、味も素っ気もない音だ。リマスターで化粧し直して欲しいと思う。

ロストロポービッチとのチェロ協奏曲はライブで低音質。ロストロポービッチはリヒテルとのブラームス二重協奏曲がいい演奏だったが、アップされていないようだ。

⑰コダーイのハーリ・ヤーノシュ組曲

高音質の名演奏。ただし曲そのものは大したものではない。

⑱シベリウスの第2番、第4番

2番の演奏を聴き始めた瞬間から鳥肌が立つ。セルの「白鳥の歌」がこんなに完全な録音で残されたのは奇跡としか言いようが無い。

変な話だが、東京文化会館でよかったと思う。サントリーホールではこれだけ生の音は聞けないだろう。生身の演奏者が目の前に血刀引っさげて突っ立っていて、それに取り囲まれているような錯覚さえいだかせる。全員が剣の達人だということが分かる。

とにかく腰が抜けてしまう。頭蓋骨の中でバチバチと火花が散って、終わったとも残響音が回っている。

また東京のコンサートでアンコールに上演されたラコッツィ行進曲もいいが、ガンで余命2ヶ月の人がこんなことまでしなくても良かったのにと思ってしまう。

4番もライブ盤には珍しく良い音である。フェラスのバイオリン協奏曲のライブ録音もあるが、音は悪い。フェラス=カラヤンBPO盤は当時のベストセラーだった。そのフェラスがクリーブランドまで来てセルと共演したのには、いろいろ裏があるのだろう。とくにセルのカラヤンに対する思いが気になる。

そういう話を抜きにすれば、それほど面白い演奏ではない。

⑲タルティーニのヴァイオリン協奏曲ニ長調

ヨーゼフ・シゲティのおはこの曲で、セルがコロンビア交響楽団を振って伴奏している。1954年の録音というがひどい音だ。SP以下だ。放送用のフィルムから起こしたのではないか。

しかし中身はいい。セルがしっかりと低音弦を響かせている。もともとレコード界ではオケ伴指揮者で名を上げた人だから、その気になればうまいものだ。

これはおまけということで…

ということでYouTubeのセルのベストファイブ

①シューマン交響曲第4番

②シベリウス交響曲第2番

③ハイドンの交響曲第94番

④モーツァルトの協奏交響曲

⑤ラベルのダフニスとクロエ第二組曲

ということになる。できればブラームスの4番も上げたいところだが、ライバルが多すぎる。