今度はスロベニアだ。
ポスト・ユーゴスラビア連邦の優等生と言われてきた。
小さな国だ。ほとんどミニ国家といってもいい。
面積は四国と同じ2万平方キロ、人口200万人。
91年にユーゴから独立した。内戦はあったが小規模なものだった。
04年にはEUに加盟、07年にユーロを採用、
高い経済成長を維持してきたが、リーマンショックでやられた。

ただこの国は、わりとまじめにやってきた。
変な話だが、これほど有名人のいない国も珍しい。

タックス・ヘイヴン的な政策はとらなかった。
出稼ぎ・観光・金融という欧州途上国パターンではなく、
輸出志向型工業の比重が高い。
貿易収支はわずかに赤字だが、それを観光収入でカバーしている。

日本でも、ひと通り回った人たちの穴場的な観光スポットとなっている。
住民の素朴さと治安の良さが、引きつけているようだ。
要するに堅実・健全を絵に描いたようなマクロ構造なのだ。

ネットでは日本語の資料がほとんどなく、憶測の域を出ないが、こういう国でEU内大手金融の大量の貸込みがあったとは思えない。債務は主として民間金融機関の節度なき経営にあったのではないか。

もう一つ、EU型再建策の押し付けに反対する政権が登場したことだ。
ブラトシェク新政権はIMF、ECBなどに頼らない金融再建を目指している。
ただこれがきわめて厳しい道であることは言うまでもない。
政府の道筋はこうである。
まず市中銀行の不良債権を買い取る。そのために買取機構を創設する。ここで不良資産を塩漬けにする。
これは結局政府債務となるが、これを国債発行と市中消化でまかなう手はずだ。

しかし話がそんなにうまくいくわけはないので、当面上半期末までの債務償還20億ユーロがクリアできるかどうかが、最大の焦点になっている。

どうもヘッジファンドが面白がって仕掛けている面が否定しきれない。

最終的には度胸だ。アイルランド、ギリシャ、キプロスと来て、今更スロベニアは潰すという訳にはいかないだろう。償還はぎりぎり引き伸ばしてみせる。その間に金融立て直しが進んで、景気回復に見通しが出てくれば、債権者も新条件を飲まざるを得なくなる、という腹づもりだろう。

これは、ご存知キルチネル方式だ。アルゼンチンの金融破綻の際に、当時の大統領キルチネルがケツをまくって、「一文だって払うものか」と啖呵を切ったあれである。

EUで誰か一人くらいやってみないものかと思っていたが、やっと一人出てきた。条件は十分あると思う。期待したい。