自転車というのは不思議な乗り物で、同じ人間が同じカロリーを消費しているのに、歩くのよりはるかに早く移動できる。
場合によっては歩くのより疲れない。
どうしてエネルギーをこのように効率良く使えるのだろう。おそらく“歩く”という行為にふくまれる無駄な動きがかなり整理されているのだろう。
では、どこがどのように整理されているのだろうか。
まず、歩くのには立たなければならないが、自転車は座ったままであるから、立位を保持するためのエネルギーはかなり節約できる。下肢は自重だけを支えれば良いので、腰から上の体重を支える必要はない。回転運動に専念すれば良い。
二番目に、自転車というのは“その場足踏み”であり、前に進む力は必要としないことである。しかしこれは、ペタルというピストン仕掛けが上下運動を回転運動に変えているだけであるから、これはエネルギーの節約にはなっていないと思う。
三番目に、歩くのには重心の上下運動が伴うが、自転車にはそれがない。これはトータルすればかなりの節約になるだろう。
四番目に、歩くのは主として等張性運動であるのに対し、自転車にはかなり等尺性運動の要素が加わるということであるが、これがエネルギー消費量(酸素消費量ではなく)に何らかの影響を与えるか否かは不明である。