首相の発言のなかで注目されるのは、⑤であり、ここではTPPがソロバン勘定ではなく、ひとつの理想として謳われている。
だが、TPPは人類社会の「理想」を内包しているのだろうか。
人、モノ、資本が自由に往き来するなかで生産が刺激され、経済が発展し人類が豊かになっていくのは大いに結構なことである。
それはただ自由化すれば実現されるのではなく、人類の共通の価値観を、これと並行しながら形成していくことで初めて実現するのである。
そういう意味では、たんなる自由化ではなく、それを通じて人類の理想を追求するという首相の構えは正しいと思う。
とすればTPP構想により具現化された来るべき世界の価値観とはどんなものだろうということを検討しなければならない。
我々は、それに近いものとしてブレトン・ウッズの構想を持っている。そしてそれが具体化されたものとしてのITO憲章(ハバナ宣言)を持っている。

それらについてはこれまでも触れてきたので、詳しくは繰り返さない。ただキーワードとして3つを挙げるならば、①ブロック化の拒否とルールある国際貿易の促進、②とりわけ発展途上局のキャッチ・アップによる経済的平等の実現、③人々の社会的権利の擁護、とりわけ働く権利の擁護、の三点に集約される。

今日それらはWTO、UNCTAD、ILOの各々の憲章に示されている。(実際にはWTOは独走し、その結果として破産しているが)

国際貿易と国際経済の正しいあり方について理想を追求するとするならば、途上国をふくめ多くの人々がさらに経済発展の成果を享受するような諸原則が必要である。

米国基準を世界基準として押し付けるTPPは、これらの原則を満たしているとはいえない。その基本発想は知財権の絶対化であり、基本的人権の相対化だからである。しかもこれは米国が国内で追究する政治思想とは切り離された二重基準でしかない。