経済学者の友寄さんは、円安を短期要因と中・長期要因に分けている。

短期の方はいわば仕掛けたバブルだから分かりやすいが、中・長期的要因もそこには関与していると見る。

そこには外的要因と内的要因がある。

外的要因としては、ヨーロッパの経済危機が峠を超えつつあるという予感(実際にはまだこれからだろうが)、アメリカ経済の回復の兆候、アメリカにおけるシェールガスの生産本格化があげられる。

内的要因としては、貿易赤字の定着と経常黒字の減少があり、日本の強さへの疑念が強まっていることである。

これらの要因のなかでもっとも基本となるトレンドは、言うまでもなく日本経済の弱体化への不安であり、むしろこれまでが変だったのだ。為替相場は相対的なものであり、こちらが下がっても向こうがそれ以上に下がれば、上がるという関係にある。

したがって円は基本的には下げ方向にあり、これからの円相場は、日本よりもヨーロッパ、アメリカの景気動向によるであろう。一気に20円も上げたんだから、しばらくは95円前後の小動きが続くのではないか。

アメリカの景気を悪くしていた最大の問題は、共和党による極端な金持ち優遇、貧困者切り捨ての政治にあった。オバマの再選はブッシュ以来の保守回帰に一定の歯止めをかけた。最大の原因はオバマが大衆と手を結び富裕層と対決する戦略をとっていることにある。

ブッシュの置き土産である金持ち減税の廃止と富裕者への課税強化は、不十分ながら実現した。ボルカー・ルールも発動した。オキュパイ運動の余韻は世論の雰囲気を少しづつ変えつつある。

ただそのことによる経済的成果は目に見える形では現れていない。それが現れ始めた時、世界は大きく変わっていくのではないか。