赤嶺議員の質問に対する答弁で、イラク帰還自衛官の自殺が26人に達したことが明らかになった。

とくに陸上自衛隊に自殺率が高い。自殺者数は陸自だけで19人に達している。
イラク戦争中の足掛け3年で陸自5600人が派遣されているので、自殺率は19/5600=0.34%となる。
日本全体の自殺者はH23年で約3万人、0.025%となる。したがってイラク帰還自衛官の自殺率は日本国民の平均と比べ34÷2.5=13.6倍に達する。

赤旗では陸自全体の自殺率も出しており、0.039%となっている。ただし、自衛官の大部分が男性であることを考慮に入れると、国民に比べ特段に多いとはいえない。

駐留そのもののストレスに加え、空自以上の環境ストレスが加わったものとみなさなければならない。

これは明らかに異常である。戦死者とまでは言わないが、戦争関連死である可能性は極めて高い。



自殺そのものは、精神的パワーが枯渇(精神運動抑制)した下で、能動性と抑制系のバランスが破綻し、気分、認知と思考の歪みをもたらすことから生じると考えられる。

抑制系のはたらきというのは自己の客観化であるが、そのためには他者との接触が不可欠である。ところが精神的パワーが落ちてくると他者との接触が困難になるのが厄介なところだ。

能動性と抑制系は同じ精神的パワーにより駆動されていると考えられるが、抑制系のほうがより高次脳機能に属していると考えられ、したがって能動性の回復との間に時間差が生じる。脳卒中患者の観察では、高次脳機能の回復には年余を要するというのが実感である。


当初は徹底した睡眠が必要だが、回復期に入ると、一般的な休養だけではなく、歪みが増強しないように抑制系を適度に強化・コントロールしつつ精神的パワーを引き上げて行くという、ちょっと複雑な操作がもとめられる。

これがある程度の精神的疲労であれば、自律神経系の働きによりホメオスターシスが働くのだが、強烈なストレスのあとでは、外部の目と言葉かけ、服薬などが必要になる。モルヒネ系が一番効くと思うが、禁止されているから仕方ない。素人が手を出せば麻薬中毒になるのが落ちだからやめたほうがいい。

したがって発症段階、初診段階での心的ストレスの度合いと、精神的パワーの消耗の程度、とりわけ認知の歪みを中核とする抑制系の評価が必要なのだが、これがうまく行っていない。

もちろんストレスに対する耐容能力も個人差がある。これが脳内ドパミン濃度とか、セロトニン値とか、なんらかの数値として客観的に出ると良いのだが。


「大事な兵隊さん」をむざむざと自殺に追い込むのは、右翼反動勢力にとってもありがたいことではなかろう。まずは徹底的な帰還自衛官のフォローアップが大事だ。プライバシーに係る点もあるが、情報はできるだけ公開すべきだろう。

自衛隊にとっても未知の体験で、手探り状況なのはわかる。恥ずかしがったり隠し立てする必要は全くない。ただ戦争なんかはやらないほうがいいということは、はっきり言っておく。自衛隊は戦争屋ではないのだ。

なお米兵の自殺率ははるかに高い。

2012.6.25 米兵が毎日1人自殺

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