ブロゴスというサイトに広瀬隆雄さんという方の書いた記事がある。
ウゴ・チャベス大統領の死が世界の石油関係者や石油関連の投資家にとって重要な理由
2013年03月06日 21:27
ということで、重要な理由は、結論から言えば、「ベネズエラは石油の確認埋蔵量で世界最大」だからです。
ということで、チャベスが悪いから石油生産が減ったんだという筋書きになっています。
ここで広瀬さんは2つのグラフを提示しています。最初が各国比較の推移です。ついでベネズエラだけを取り出したグラフを提示します。
「上のグラフは見にくいので、ベネズエラだけを抽出する」というふうに並べるのが、ちょっとしたトリックです。本当はまず、ベネズエラ単独の推移を見て、それが世界の中ではどういう関係になっているのだろうと、考えなければなりません。
ここでは、まずベネズエラ単独の推移を見てみます。
この図から、広瀬さんは次のような結論を導き出しました。
チャベス大統領はベネズエラの国営石油会社、PDVSAから上がる石油売却代金をどんどんバラマキ政治のために使ってしまいました。このため本業への再投資がおろそかになり、生産が細ったというわけです。
この図は実はそうは読めないのです。
まず08年以降の漸減ですが、これはリーマン・ショック後の需要低迷と原油価格の下落に伴う生産調整です。(それが全てとは言いませんが)
なお、2011年の原油生産量は09年レベルまで復しているが、このグラフには反映されていません。
もうひとつ付け加えて置かなければならないのは、ベネズエラに投資している国際石油メジャーとの利益配分をめぐる闘いです。強硬な姿勢をつらぬくベネズエラ政府に嫌気が差して、いくつかのメジャーが撤退しました。これが生産量の落ち込みと関連している可能性があります。ただし、現在は裏付け資料を持っていませんので推測になりますが。
03年の落ち込みは、言うまでもなく石油公社のゼネストによる影響です。
問題は98年のピークですが、この年の末にチャベスが二大政党の候補を打ち破り大統領になったのです。この年に国民生活は最悪の状況を迎え、国民は金持ちにバラまく既成政治にノーを突きつけたのです。生産が拡大すれば景気が良くなるはずなのに、なぜそうなったのか、そこが問題です。
じつはこの時、膨大な対外債務に苦しんでいたベネズエラは、メジャーに大増産を迫られたのです。なぜか、当時OPEC諸国は原油安に悩み、生産調整によって価格の底支えを図りました。これに対しこの協定を破壊しようと考えたメジャーは、ベネズエラにスト破りの役割を押し付けたのです。
これが各国生産量の推移を示す図に現れています。
お分かりのように、中東諸国やナイジェリアとベネズエラの生産量はほぼ横並びです。ところが94年から01年にかけては突出しています。あとは元に戻っていますが、それ以上にドンドンと落ちていくわけではありません。
なお、ベネズエラはOPECの創設国の一つですが、ペレス政権時代にメジャーからOPEC離脱を迫られ、オイルショックに対する安全弁の役割を果たしてきました。しかしチャベス政権になってからOPECに復帰し、他産油国と共同歩調をとるようになっています。
もうひとつ付け加えて置かなければならないのは、日本のような輸入国にとっては生産高が主要な問題ですが、輸出国にとっては輸出高のほうが重要だということです。
これは前にも引用した図ですが、これを見れば生産量アップの必要などないことがわかるでしょう。
広瀬さんの結論はこうなっています。
ベネズエラが欧米に フレンドリーな政治に戻ってゆくならば、オイルメジャーなどがベネズエラに食指を動かすでしょう。その半面、ニコラス・マドゥロがチェベス流の政治を継承 し、同じような政策を続けるのなら、ベネズエラは現状維持、そしてゆくゆくは中国からの強い影響下に置かれるでしょう。
「欧米に フレンドリーな政治」とはどういう政治でしょう。メジャーに「食指を動かされる」のはどんな気分でしょう。私には生娘が金持ちのヒヒ爺に、“おとなしくしていれば悪いようにはしないから”と舌なめずりしながら、言い寄られている場面が想像されてなりません。
コメント
コメント一覧 (1)
1999年以降のロシアの生産量増大に他国が調整しているようにも読み取れます。