「働くみなさんへのアピール」で、おやっと思った記載がある。

日本企業全体の経常利益は1.6倍に増えたが、働く人の所得(雇用者報酬)は9割以下に減少しました。

という“従来通りの”記述の後に、

輸出は1.25倍になりましたが、国内需要は約1割減少しました。
「国際競争力のため」といって乱暴なコスト削減で輸出は増やしたけれど、働く人の所得を大幅に引き下げたために、国内需要が減少し、デフレ不況の悪循環に陥っているのです。


これは必ずしも企業悪徳論ではありません。経済戦略としての「輸出依存による状況打開」路線を失敗だったと総括し、もはやその路線は通用しなくなったと非難しているのです。

これはこの間、私も書いた「低価格競争先行」論を念頭に置いたものでしょう。労働者を絞ってもっと利益を上げましょうと最初から狙っていたのではなく、結果的にそうなってしまったということになりますから、はるかに説得的な議論です。

海外市場での激しいシェア争いの現場についてはよくわかりませんが、超円高のなかで売上確保のため、相当なコストカットが求められたのでしょう。

「あそこで俺たちが頑張ってシェアを確保していなかったら、今頃日本は沈没していたかもしれないんだぞ」という自負が営業畑にはあるのかもしれません。たしか歴代の経団連会長はアメリカ支店上がりばかりではなかったかな。
しかしそういう営業畑でも、「これは短期のしのぎ話、こんなこと続けていたら死んでしまう」という感覚はあるはずです。
そしてまさしくいま、そうなってしまったのです。