パソコンが壊れたついでに、溜まっていた本に手をつける。
加賀乙彦さんの集英社から出した新書本。
この人は未だにどういう人か分からない。昔「フランドルの冬」という小説を読んだが、かなりイラツイた。
知識は豊富、理路整然として、語り口はうまいのだが、本心が分からないところがある。

この本は、基本的には精神科医の書いた“幸せ本”である。医者目線が通底しているので、医者が読むにはつまらない。加賀さんも別に医者に読んでもらおうとは思っていないだろうが…

なかで面白かった所

①日本人の集団志向は事大主義に過ぎず、本質的には利己主義だ
社会心理学者の山岸俊男が、「心デッカチな日本人」という本で面白いデータを紹介しています。
日米の学生を対象に、集団の利益と個人の利益のどちらを優先するか、どちらが一匹狼的な行動を好むかを図る比較実験を行った所、アメリカの学生の方が集団の利益のため協力的に行動し、日本の学生の方が一匹狼的に行動する傾向が強いという結果が出ました。
つまり日本人本来の性向としては集団主義が好きでは決してないのに、日々の生活のなかでは無理をして集団主義的に振舞っているというのです。
ただ、ここで山岸氏がいう個人主義とは、「個人の利益を集団よりも重視する」という、個人主義の一側面に限っての話。ほかの側面ではアメリカ人のほうが日本人より個人主義的な傾向が強く出たそうです。

これを読み解けば、「日本人の集団志向は事大主義に過ぎず、本質的には利己主義だ」ということになりますが、加賀氏はそこまでは進みません。

②日本の自殺者統計には嘘がある。実態ははるかに深刻だ。
日本の自殺率はWHOがデータを収集している101カ国中ワースト8位。…主要先進国のなかでは突出しており、アメリカやカナダの倍、イギリスの3.5倍にものぼる。
さらに年間3万人どころか実際には10万人が自殺しているという説もある。…WHOは「変死者」のおよそ半数が自殺だと述べています。
そのため、変死者の半数を自殺者統計に加えている国が多いのですが、日本ではそうではありません。
日本の変死者数は急増しており、ここ数年は年間14~15万人で推移している。諸外国のようにその半分を自殺に含めれば、日本の自殺率は圧倒的に世界一位となる。

③財界・自民党は北欧批判の間違いを反省すべきだ

かつて日米の経済学者や政治家は、北欧型の高負担・高福祉国家は高い税金のために国際競争力が落ちて経済が停滞する、グローバル化する社会に取り残されると、しきりに言っていたものでした。
しかし日本は2003年の世界第三位をピークに、07年の23位まで下がり続けいます。一方、スエーデンはずっと8位をキープしています。
福祉も環境も犠牲にして経済成長を優先してきた国が、経済面でも遅れを取ってしまうとは、なんとも皮肉な話ではありませんか。

これはいい話です。使えます。
むかしから、民主勢力の一部には日本の現状と比較して北欧諸国が素晴らしいという無条件賛美論がありました。
それにに乗っかるつもりはありませんが、財界が「福祉が社会をダメにする」との北欧批判を展開してきたことも忘れてはなりません。
いま財界に対し、深刻な反省を求めてもおかしくはないと思います。