「アトランティック」紙電子版が帆船乗っ取りの手口を説明したTim Fernholz記者の記事を載せている。以下に紹介する。


あなたがアルゼンチンに若干の債権を所有するとしよう。

国は、債務返済不能に陥る。

しかし、あなたはまだ全部支払われたいと望む。

解決法は?

彼らの船のうちの1台を抑えなさい。もちろん身代金目当てだ。

ウォール街はそういう考え方をするものだ。それはどんな政府よりはるかに重要である。

それが、ヘッジファンドが過去のローンを取り戻すためにアルゼンチンの海軍船を押収したしても驚かない理由である。

Elliott Capital Managementの子会社は、9月2日に地元の法廷から仮処分命令を得て、ガーナの港でリベルタード号と200人のクルー・メンバーを拘束した。

アルゼンチンは2001年に総額1000億ドルのデフォルトを起こした。その負債は再構成したとき、1ドルの債権に対する支払いを30セントまでカットされた。ファンドは、減額を納得せず、そのとき失ったお金を集金しようとしている。

リベルタード号は、全長100メートルの長い高い帆船である。1950年代に建造され、アルゼンチン海軍のトレーニング船として就航した。現在の評価額は1千ないし1千5百万ドルとされる。押収されたときは、海軍士官候補生の卒業航海中であった。

億万長者ポール・シンガーが創設したエリオット社は、アルゼンチンの債務リストラを拒絶した数社のうちの一つである。

エリオット社は債務の完全な支払いを要求して、米国内、国際的な法律の場を通して問題を追求してきた。法的手続きは、とてもフォーマルと呼べるものではなかったが。

2001年のアルゼンチンのように、財政的に問題を抱えた国から減価した債券を買い集める。そして国が経済的に回復した時に全額を額面通りに回収しようとする。

1990年代にペルーの政府債務支払で、エリオットが投資額の400%を回収するのに成功した時、この戦略はポピュラーなものになった。

明らかに、ファンドは慎重に船のコースを見守ってていた。そして、船を押さえて要求を突きつける機会を待っていた。

アルゼンチンが船を返して欲しければ、ガーナの法廷に債券に相当する現金を払わなければならない。伝えるところによると、それはエリオットの懐に入ったという。

いわゆる「ハゲタカ」ファンドは、すでにヨーロッパの金融危機がもたらした機会を利用している。

今回の行動は、遠くない将来を映す試写会であるかもしれない。融資者が政府資産を追いかけている。飛行機、船舶、そして不幸なケースにおいては国際援助資金さえもが狙われる。

世界中の、債務で鞭打たれた政府がついに倒れようとするのを、彼らは狙っている。