生保の最も深刻な問題は質の問題ではなく量の問題にある。

生保のあり方について議論するのは、それ自体は否定しない。ただ生保が対象者の1/5しか捕捉していないという事実が最大の問題だ。捕捉していないというより、捕捉能力を超えて生保対象者が激増しているという方が正確だろう。

これは小泉時代に構造改革路線に大きな責任がある。当時、竹中は「セーフティ・ネットをしっかり張ってあるから大丈夫」と繰り返したが、結局そんなものはなかった。

だから失業すれば即生保ということになってしまった。母子家庭も、他に救う手段がないから生保になってしまう。生保は外堀を埋められてしまっているのだ。

ここが生保が急増した原因だ。そこをなんとかしようというのが本筋の議論ではないか。失業保険の延長、職業訓練の充実、教育・医療への個別援助の拡大等が必要だ。

もう一つ、これは派生的な議論になるが、生活保護への出費は決して冗費的なコストではないということだ。

受給者は受け取った生活費をほぼ100%使用する。したがってこれは日用品や必需品の生産・流通業者への財政支出と同じ意味を持つ。投資効果は単純計算でも2倍だ。実際にはG-W-G' で利潤がついてくるから、3倍にも4倍にもなる。内需拡大政策そのものだ。

生保財政への支出は地場産業の支えとなる。これが大企業への優遇処置なら、投資した金はそのまま内部留保として塩漬けにされてしまう。

政府が10兆円の財政出動をすると言っているが、内需拡大につなげようと思うなら、それを全部生保枠の拡大と、生保以外のセーフティー・ネットの拡充につぎ込むのが最も効率的だ。

「冗談でしょう」と思われるかもしれない。しかしブラジルの経済成長はルーラ政権の貧困層かさ上げ政策がもたらした。この事は世銀も米州開銀も確認している。

インフレがお望みなら、貧困層へのバラマキほど有効な手立てはない。貧困層のさらなる貧困化と、大企業へのバラマキ政策は、海外からの貿易外収支の大幅黒字化と“ドル余り”をもたらし、結局円高へと導くことになる。

経団連は認めたがらないが、事実が証明しているから仕方ない。