サヘル地帯(Wikipediaより)

サヘル地帯は様々な紛争を抱えており、いまや世界の火薬庫となっている

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思いつくままにあげてみても、スーダンのダルフール・南スーダン問題、チャド戦争、ナイジェリア北部での宗派対立、モーリタニアとセネガルの国境紛争、マリ・ブルキナファソ・ニジェールでのトゥアレグ人の抵抗などがあげられる。

これらの紛争はいずれも60年代後半に起源を持ち、旧宗主国フランスやリビアのカダフィの介入が問題を複雑化し、40年を越える長期の紛争となっている。

紛争が長期化する要因は、サヘル地帯の自然上の、あるいは文明上の特殊性にも規定されている側面がある。

私は過去に、ダルフール・南スーダンの問題も勉強してみたが、マリとの驚くほどの共通性を見出した。

サヘル地帯はサハラ砂漠とサバンナ層、さらに熱帯雨林地帯へと続く中間層をなす。基本的にはステップ地帯であるが、サバンナ地帯との境界は多様で、一部は定着型農業地帯となる。

サヘル地帯は人種的にもアラブ系と黒人系の境界をなす。アラブ系(ベルベル人)はステップ地帯での牧畜産業を担い、黒人は亜サバンナ地帯での定着型農業を担う。

この地域では一般に乾燥化が進行していると言われ、それはとりわけ牧畜に携わるアラブ系住民にとって厳しいものとなる。

一方で、灌漑農業が発達すれば亜サバンナ地帯は有力な農業地帯となる。それは黒人住民の進出をもたらす。それは同時に固定資本の発生を意味するから、黒人内部での階級分化をももたらす。

端的に言えば、黒人層には明日があるのに、アラブ系にとっては明日はないのである。

トンブクトゥと南スーダンの北部国境地帯は、これらの矛盾のすべてが集中して表現されているところであろう。

日本には「サヘルの森」とか「緑のサヘル」などというNPOがあるようだ。それらのホームページを訪ねてみて感じたのだが、支援の対象はどうも黒人定着農民が中心のようだ。国際的にも「国境なき医師団」などNGOは、黒人側からの情報発信が中心となっている。

これだと今回のトゥアレグ人の蜂起はなかなか説明しにくいのではないか。どうも何かあるとひたすら、黒人が犠牲者でアラブ人の側が悪者になっしまうのだが、ことはそう簡単ではないように思える。


牧畜民の生活は漁民と似ている。海はたしかに広大ではあるが、魚が集まる漁場というのは、その中でも限られている。そういう“漁場”を大切にしながら、牧畜民は長年生活してきた。

その漁場は、農業をやるのにも最適のところだから、農民が進出してくる。農業は牧畜に比べればはるかに生産性が高いから、合理的ではあるのだが、牧畜民にとってはまことに不合理である。

諫早湾を海として守るか、干拓して水田とするかという議論とも似ている。一般的な経済合理性では語れない性格を持っている。

しかし、牧畜民にとっては草場を守るのは、まさしく命がけの戦いなのだ。ここのところは理解しておく必要がある。

さらに人種とか文明が異なるのだから、余計慎重でなければならないと思う。Nation は国家とも民族とも訳すが、かなり厄介なものである。

ベルベル人は過去において黒人狩りをして、奴隷として売り飛ばした歴史を持っている。それだけに非妥協的にならざるをえない。これはきっちりと歴史的に総括しなければならない。