経団連の経営・労働政策委員会が、春闘を前に例年のごとく「報告」を発表した。
この委員会は日経連の流れをくむもので、労組対策(ふるいですね)を基調としているから、その論調には駆け引きがある。
だから、文章を言葉通りに読むことにはならないのだろうが、それにしても古色蒼然としている。
我々が学生時代に書いた議案書と同じで、“人民の生活はますます困窮し、情勢はまますます緊迫している”という「万年危機論」のオンパレードだ。

構造的な把握が必要だ。そのためには聞きのよって来たる原因について分析しなければならない。そしてその危機からの根本的な脱却法を提示しつつ、当面の対処法を打ち出さなければならない。

赤旗の行沢記者は、そのことを端的に表現している。

では、なぜ「名目GDPはピーク時の1997年と比べて50兆円以上も減少」(経労委報告)したのか、その最も重要な分析はありません。

経労委報告は、自縄自縛に陥っている。

①個人消費が落ち込んでいる大きな要因は国民の将来に対する不安だ
②国民に安心感を与えるには、企業活動の活発化が必要
③そのためには、自助を基軸に据えた社会保障制度の改革、労働市場の柔軟化、労働規制の見直しが必要だ。

つまり個人消費の落ち込みを回避するためには、個人所得の引き締めと一層の収奪強化が必要だということになる。

私が構造的というのは、もはやそういうレベルを超えていると認識するからだ。
短期的には国民の犠牲の上に資金を集中させて、企業活動を活発化するという手法はありうる。しかし経労委が指摘するとおり、ことは1997年以来15年続いた話なのだ。

その間、大規模な公共投資もやってきた。労働規制の緩和もやってきた。国民に「痛みを伴う改革」もやってきた。ジャブジャブの金融緩和も続けてきた。

言うならば、あなた方がやりたい通りにやってきた。それがこのザマだ。