まずはブログ主自身による解説。

ボルト埋め込みの方式

ケミカル・アンカー方式とは、ボルトの径より少し大きい穴を、振動ドリルで穴を開け、そこに接着剤を充填して、ボルトを埋め込み、定着させるという方法だ。分かりやすく言うと、接着剤アンカーだ。

1975年に笹子トンネルが出来たころは、まだ一般的ではなかった。

それまでの常識は、まず生コンクリートに埋め込む一体方式アンカーと、後打ちアンカーと云われるホールイン・アンカーだ。

ホールイン・アンカーとは、まず特殊なナット(メス)を打ち込む。このナットは、先端にクサビのようなものがあり、打撃で内部で広がり、固定される。そこにボルト(オス)をネジ込み固定する。

強度が不足なために、それほどの強度が必要ない時に利用される。

ケミカル・アンカーの問題点

その後、ブログ主は施工時の表面平滑化処理の不確実性、経年劣化の問題を挙げ、ケミカル・アンカーに懐疑的な移行を表明している。ただその後の接着剤の改良の可能性について含みは持たせている。しかしそれは75年時点の接着剤の弁護にはならない。

最後に、ブログ主は「北米の建築思想」というオブラートに包んで、思想としての「ケミカル・アンカー」を否定している。

北米の建築思想を学んで、一番感心したことは、施行に接着剤を用いないことを前提としている。なぜか、未だ永久的な接着剤はないから…

このブログ主に対する反論コメントが掲載されている。Gooの自作自演っぽいコメントに比べるとかなりまじめな反論だ。

(ケミカル・アンカーの強度は十分である)この配置なら、2本や3本死んでも余裕で持つはずです。

可能性があるのは、

①地震などの影響による地盤の変形によってトンネル構造に歪を生じた

私としてはトンネル構造のゆがみは、基本的にはせん断力として働くはずで、アンカーが抜け落ちる現象の説明にはならないと思う。折れたとか曲がったというなら別だが。

②施工不良で定着長が短かった。

(天災とヒューマン・エラーを強調する中抜き論で、よくある議論である。ただ、施工のよしあしによって安全性が規定されるような工法は好ましいとはいえない)

としている。

ブログ主が主張する劣化論は、コンクリートの中性化が3~5センチの深さにとどまっているだろうとの推測の下に否定する。

「劣化因子である、熱および紫外線はトンネル内では考えられません」とあるが、湿度や温度はどうなのだろうか。「コンクリートの劣化原因」というページに劣化因子の一覧表が載っているが、熱と紫外線のみを取り出すのはいかにも恣意的であろう。

素人的感想になるが、外気下にある建築物に比べ、絶え間ない高圧というストレスは、それだけではるかに苛酷な環境と思われる。もしそれが逆であるのなら、レトリックではなく根拠となるデータを示してもらいたいが。

ブログ主が問題にしているのは接着剤の劣化であり、コンクリートの劣化ではない。今回の脱落も周囲のコンクリートごと剥落したわけではない。これは明らかな問題のすり替えである。

最後のコメントが傑作で、

35年で大きくとってある安全率を超える劣化をするようなら、もうあちこちで問題が出ているはずです。

と書いたが、いまやあちこちで問題が噴出して危機一髪状況だ。


付け加えておきたいが、別にケミカルアンカーを否定するわけではない。きちっと安全性が担保されているなら、それ自体は革新的な技術だと思う。

むかしは、胃がんの手術といえばR3といって腹の中を空っぽにするくらい、リンパ節隔清を行ったものだ。乳がんの手術といえば、乳房切断に腋下リンパ節、さらには鎖骨上果まで隔清した。

5年生存率を1%でも上げるために、どこの大学も拡大手術に血眼になったものだ。最近ではこれらの考えはだいぶ廃れてきている。どこかでQOLとのトレードオフが必要なのだと思う。