この記事は紙面の下1/3を埋める大きな記事である。
見出しだけで5本もある。さらに図が四つ。さらに「1塩基多型」を解説したミニコラムが挿入されている。まさに情報てんこ盛りだ。
間宮記者の書いた文章が1/3その半分がリード、残りは研究者へのインタビューとなっている。このインタビューには独自のリードの他に三つの小見出しがついている。
とにかく読みにくい構成だ。
間宮記者は、本当はこの10倍くらい書きたかったに違いない。

今回は「核心的事実」について、学術論文風に整理してみた。

目的および方法
①研究の目的はゲノム解析の方法をもちいて、エスニックな諸集団の系統関係を整理しようというもの。
②研究の方法は、血液検体で人のゲノム上に散在するSNPと呼ばれる変異をチェックすることである。今回はアイヌ人36人(平取町)と琉球人35人について検討し、60万個のSNPをチェックした。
③また、これまでに解析された本土人、韓国人、中国人のSNPパターンと比較検討した。

結果
①アイヌ人に最も近いSNPパターンをとったのは琉球人であった。次に近いのが本土人であった。
②本土人と韓国人の類似度に比し、本土人とアイヌ人・琉球人の類似度は低かった。

考察
①これまでミトコンドリアやY染色体のDNAを用いた調査が行われてきたが、比較に用いた因子が60万という精密さは圧倒的である。(「解像度」が格段に良くなっている)
②本研究に先行するものとして、08年の理化学研究所グループの調査があり、ここでは本土人と沖縄の人のSNPに明確が違いがあること、本土人のなかでも混血の度合いに差があることが示されている。
③今回の調査結果は、琉球人とアイヌ人がともに原日本人であり、朝鮮から渡来した人々により両端に追いやられたという仮説を支持する所見である。
③アイヌ人は琉球人より個人差の幅が大きく、北方民族との混血を示唆する。

記事には、検査結果の考察からさらに踏み込んだ推測が載せられている。

たとえば混血の始まった年代が図示され、縄文人が本土人、琉球人、アイヌに分化したのが紀元前1千年前後、渡来人と本土人の混交が始まったのがそれから300~400年後となっている。したがって本土人はまず本土系縄文人として分離し、さらに渡来人と混交したのちに、あるいは混交したことによって弥生人となったということになる。

これはさすがに言い過ぎではないか。

60万もの調査ポイントを設定しているから、格段に精度が上がったと自慢するが、私としてはサンプル数の少なさのほうがむしろ気がかりだ。たとえば私が検体になったとしてこれまで身長・体重だけだったのが、視力、聴力、握力、背筋力と検査項目を増やしたからといって、日本人の特徴がより正確に分かるようになるわけではない。

60万という計測ポイントはそれ自体非常に重要ではあるが、対象が平取という町の38人の検体に過ぎないということも抑えておかなければならない。

60万を錦の御旗にして、これまでのDNA解析に基づくデータを否定するのは、早計である。とくに相反するような結果になった場合は、慎重なつきあわせが必要であろう。