書評欄のもう一つは 森善真 著 「啄木の親友 小林茂雄」という本の、望月善次さんによる書評

小林の名を多くの人に知らしめたのは、「一握の砂」のなかの

近眼(ちかめ)にて
おどけし歌をよみ出(い)でし
茂雄の恋も悲しかりしか


という歌だそうだが、

その自家本に、啄木の妹、光子がこう書き込んでいたそうだ。

誰が破りし恋ぞ、
詠み人にあらで


こうなると、俄然、話は怖くなってくる。
「誰が破りし恋ぞ!」だけでも十分きついのに、さらに「お前じゃないか!」と追い討ちする。
光子さんは、この一件、よほど腹に据えかねているようだ。

ひょっとすると、題名の「啄木の親友」は、「啄木の『親友』」と書き換えなければならないのかもしれない。これから啄木を読むときは「光子の眼」が必要になるだろう。