イラク戦争後の動き

シリアを付け狙う

①イラク政府が崩壊すると、イスラエルは米国政府に対してシリアを標的にするよう催促し始めた。ウォルフウィッツは「シリアでの政権転換は必ず行われねばならない」と宣言した。

②米議会はこれに熱心に反応した。反シリア法案は圧倒的多数(下院では398対4、上院では89対4)で可決された。もしイスラエル系圧力団体が存在しなかったならば、シリア実施責任法は存在しなかったろう。

③CIAや国務省はこの考えに反対であった。ブッシュ大統領はその執行は慎重に行うと強調した。

④シリア政府はアメリカに協力した。アル・カイーダに関する重要な情報を提供し続け、国連決議第1441号に賛成さえした。シリア自体は米国にとって何ら脅威ではなかった。

 

イランに照準を合わせる

①イスラエル人はあらゆる脅威を最も硬直した言葉で表現するが、イランは彼らにとって最も危険な敵であると広く認識されている。それは、核兵器を持つ可能性が最も高いためである。彼らは「もしイランが核の道を進み続けるならば先制攻撃を行う可能性がある」と警告している。

②イランの核武装は米国への直接的脅威にはならない。米国が核武装したソ連や核武装した中国、更には核武装した北朝鮮とすら共存できたのであれば、米国は核武装したイランとも共存できる。

③イスラエル系圧力団体が存在しないならば、予防的戦争は重要な選択枝にはならないであろう。

 

まとめ

これらのイスラエル系圧力団体の努力が成功するならば、イスラエルの敵は弱体化するかあるいは転覆させられる。そして米国は戦闘と戦死者と再建と支出の大部分を引き受けることになる。

もし米国がますます先鋭化するアラブとイスラム世界との争いに巻き込まれたとしても、イスラエルは結局保護されることになる。それは、米国政府がイスラエルと距離を置く政策よりも好ましい事は明らかである。

 

結論 イスラエル系圧力団体の勢力を抑制することはできるのか?

「イ スラエルには、多くが主張するような米国にとっての戦略的価値はない。冷戦時代にはあったかもしれないが、冷戦後においては負債としての側面が大きくなり つつある」「イスラエルの厳しいパレスチナ政策を無条件に支持してきたことによって、世界中で反米主義が高まり、テロの懸念も増した。欧州、中東、アジア の重要な同盟国との関係にも亀裂をもたらした」 

イスラエル系圧力団体から距離を置き、より広汎な米国の国益により合致した中東政策を採用する。米国の力を用いてイスラエルとパレスチナの間に公平な平和を達成することは、この地域の民主主義の運動を増進させる助けになる。

その様なことは近い内には起きないだろう。AIPACとキリスト教シオニストは圧力団体の世界で重大な敵を持たない。米国の政治家は引き続き政治的圧力に非常に敏感であり、イスラエル系圧力団体を受け入れ続けるだろう。主要な報道機関はイスラエルに同情的であり続けるだろう。

 

それは何をもたらすだろうか

①イスラエル系圧力団体は、イスラエルとパレスチナの紛争を終結させることを不可能にしており、急進的イスラム主義に貢献しており、結果としてテロリストの危険性を増加させている。

②イスラエル系圧力団体がイランとシリアの政権転覆を求めれば、それは米国をもうひとつの戦争に導く可能性がある。それは悲惨な結果になりかねない。

③倫理的に見るならば、米国はイスラエルの占領地域への拡張政策の事実上の成功要因となっている。その結果、パレスチナ人に対して犯される犯罪の共謀者になっている。アメリカが人権を尊重するように要求するとき、それは偽善であり、米国が核兵器の拡散を制限しようとする努力も偽善とみなされる。

④イスラエル系圧力団体がイスラエルに関する論争を抑制することは民主主義にとって不健全である。彼らは、ブラックリストと不買運動で懐疑論者を沈黙させ、批判者は反セム主義であると糾弾することで議論を抑圧している。民主主義が頼みとする米国議会がその犠牲となっている。

⑤最後に、イスラエル系圧力団体の活動は、イスラエル自身の健全な民主主義や解決能力の発展を阻害している。イスラエルはオスロ合意を即座に完全に履行する機会を失ってしまった。イスラエルはパレスチナ人の正当な政治的権利を否定することで、より不安定になった。

 

しかし希望の光は存在する。イスラエル系圧力団体が強すぎることの弊害はますます隠せなくなっている。真実を永遠に無視することは出来ない。必要なことは、開かれた率直な議論である。

 

<終>