ミアシャマイヤーとウォルトの論文の抜書きです。国際情勢の分析と予測というブログで「要約版」を訳してアップロードしてくれたので、それを抜書きしたものです。

2006年3月の出版といいますから、まだ第二期ブッシュ時代。ちょっと古いのですが、貴重な文献です。あの時期にこれだけ書く勇気は尊敬に値します。


アメリカのイスラエル援助は突出している

米国政府は、1970年代から、総額1400億ドルを越える援助をイスラエルに供与してきた。これは対外援助予算のほぼ五分の一をしめる。

イスラエルは毎年約30億ドルの直接援助を受ける。これは国民一人あたり約500ドルに相当する。

対イスラエル援助はさまざまな点で破格である。

①軍事援助の資金はその全額を米国で支出することになっているが、イスラエルは約25% を自国の軍需産業に使うことを許されている。

②イスラエルは援助資金の支出内容を説明する必要のない唯一の国である。ヨルダン川西岸での住宅建設などに使用することも可能である。

③イスラエルは通常の援助のほかに、武器システムの改善費として、30億ドル近くの金を与えられている。これによりF-16戦闘機などの最新兵器を入手している。

④イスラエルは、NATOの同盟国にも与えないような機密情報を供与されている。

⑤米国はイスラエルが核兵器を保有することに目をつぶっている。

米国政府はイスラエルに外交的支持を与え続けててきた。

1982年以降、米国はイスラエルを批判する32の安保理決議に拒否権を行使した。

②米国はアラブ諸国がイス ラエルの核兵器をIAEAの議題にすることを妨害してきた。

ブッシュ政権の中東介入は、部分的には、イスラエルの戦略に沿っている。

イスラエルの「戦略的価値」への疑問

イスラエルを支援するために支払った対価

①「10月戦争」(73年)の時のアメリカの緊急軍事援助は、OPECの石油禁輸の引き金を引いた。

第 一次湾岸戦争では米国はイスラエルの軍事基地を使用するために、反イラク同盟を破壊することを余儀なくされた。その後はアラブ諸国の反対を考慮してイスラエルに援助を求めなかった。

9/11以降に顕著になった傾向として、米国のイスラエル支持は、テロリスト集団と「ならず者国家」に両国が脅威を受けているという主張によって正当化された。この主張は、イスラエル政府がパレスチナ人「テロリスト」を自由裁量で取り扱うのを認めさせた。さらにイランやシリアの様な国を、「イスラエルの敵は米国の敵」という理由で敵視させることになった。

以上のごとく、イスラエルとの同盟は、テロとのたたかいと、ならず者国家に対処する為の広汎な努力にとって重荷になっている。(割と勝手な理屈ですね)

イスラエルとの同盟による対テロリスト戦略の誤り

イスラエルに脅威を与えるテロリスト組織は米国には脅威を与えない。米国が彼らに干渉する場合は別である。

パレスチナ人のテロリズムは手当たり次第の暴力ではない。それは、おおむねイスラエルの「入植」作戦への反応である。

米国のテロ問題の多くは(唯一の原因ではないが)、米国がイスラエルと非常に親密な同盟国であることによる。「イスラエルと米国が共通するテロリストの脅威により結びつけられている」というのは因果関係の逆転だ。

ならず者国家論の誤り

彼らはイスラエルにとっての脅威であるという点を除いては米国の重要な利益にとって差し迫った脅威ではない。

②彼らが核兵器を保有したとしても、米国もイスラエルも脅迫されることはない。脅迫者は圧倒的な報復を受けることなしには脅威を実行することができないからだ。

イスラエルの核兵器は、近隣国が核兵器を欲する理由の一つである。彼らを脅すことはその欲望を増大させることになる。

イスラエルこそならず者国家(とまでは言ってないが…)

イスラエルは忠実な同盟国としては行動していない。

イスラエルの当局者は米国の要求を頻繁に無視し約束を破る。住宅建設を強行し、パレスチナ人の指導者の暗殺をやめない。

②イスラエルは、国務省の査察官が「公的に承認されない供与」と呼ぶ、軍事技術の供与を中国などに供与してきた。

③イス ラエルは「米国の全ての同盟国の中で米国に対し最も活発なスパイ活動を行って」いる。