小泉記者の記事の一文が気になっています。

チュニジアのアブデッサラーム外相は停戦合意直前にガザ入りし、「イスラエルは状況が変わったことを理解しなければならない。イスラエルはもはや自由に行動することなど出来ない」と語りました。

「状況の変化」とはなんでしょうか。

私には中東の変化ということだけではないように思えます。とくにヒラリーの動きに示されたアメリカの変化がかなり本格的なものなのか、イラク侵攻のときにパウエル国務長官を退陣に追い込んだ国防省対国務省の対立が、第2ラウンドを迎えているのか、気になるところです。

基本的には国務省と国防省は一体であり、矛盾は一時的、相対的なものです。たとえばネオコン・グループとして名をはせたウォルフォビッツもエデルマンも本籍は国務省で、転籍先の国防省で頭角を現した組です。しかし大統領が民主党から共和党に変わった時など、折にふれ人脈間の対立が表に出ることもあります。

今回の動きがその露頭なのかも知れません。

まずは、一世を風靡したネオコングループはどこへ行ったのか、その影響力は依然残っているのか? というあたりから探ってみたいと思います。

中岡治さんのブログから

国防省は2人のネオコンにリードされてきました。ウォルフォウィッツ副長官とフェイス次官です。ともにユダヤ系です.

彼らの力はチェイニー副大統領と結びついていました。父ブッシュの時代、当時、国防長官だったチェイニーの下で、「Defense Policy Guidance」が策定されました。これがネオコンの防衛政策の基本となって行きます。その作業の指揮をとったのがウォルフォウィッツです。

チェイニーはアホブッシュを抱き込んで、政権の全面掌握に乗り出しますが、その尖兵となったのがネオコン・ボーイズたちでした。ラムズフェルドは元々は中道右派でしたが、チェイニーのおかげで見事に悪の花を咲かせました。国家安全保障会議もネオコンのエーブラムスが掌握します。こうして副大統領首席補佐官のリビーとのあいだに鉄のトライアングルが形成されました。

このなかで、イスラエル・コネクションの役割を担ったのはフェイス次官とエーブラムスでした。フェイスはユダヤ関連の組織「Jewish Insititute for National Security Affairs」や「Center for Security Policy」と緊密な関係にありました。彼は国防省の機密情報をイスラエルに漏洩していたことがばれ、職を追われることになります。

チェイニーはパウエルが握る国務省内にも手を伸ばしました。国務省出身で中東専門のエリック・エデルマンを国防省に引き抜き、フェイスの後任国防次官にすえています。さらには国連大使にネオコンのジョン・ボルトンを送り込みました。

中岡さんは次のように総括しています。

第一期ブッシュ政権は、国防省と副大統領オフィスのネオコンとパウエル国務長官が率いる国務省の間で外交政策を巡るヘゲモニーがあったのです。結果的には、ネオコン派が勝利し、パウエルは放逐されます。

ただ、このあたりがネオコンの花だったようです。ブッシュ政権の終わる前に、すでに彼らは凋落の道を辿り始めていました。イラク統治の失敗からラムズフェルドは退陣に追い込まれ、ウォルフォビッツは世銀総裁の座を射止めますが、愛人問題で辞任に追い込まれます。共和党は伝統的右翼がふたたび仕切るようになり、キリスト教原理派やティーパーーティの党になって行きました。

それでは、国務省や国防省における彼らの影響力は消失したのでしょうか。もし消失したとすれば、どうしてイスラエル・パレスチナ問題での政策は、オバマの積極的姿勢にもかかわらず変化しないのでしょうか。