世の中のこと、歴史上のすべての出来事をロスチャイルドとロックフェラーの仕業とみなす「ユダヤ本」に付き合うつもりはないが、今度の停戦合意に関しては、やはりアメリカのユダヤ人社会の動向を見ておかなければならないだろう。

ちょっと調べてみての感想なので、これから変更するかもしれないが…

まず、ユダヤ人社会といってもけっして一枚岩ではないということである。一般論としては、当然だが、パレスチナ問題についても同様だということだ。もう一つ、ユダヤ人は基本的には社会の中下層を形成しているのである。ユダヤ人=ロスチャイルドのような考えは、在日がみんなパチンコ王だと思うくらいばかげたことである。

ユダヤ人のマジョリティーは、都市に住み、WASPと近縁の生活を送り近縁の考えを持つ。しかしその生活が実現したのは高々50年前のことである。彼らは一般的にリベラルであり、シオニズムに関しても批判的である。しかし必要悪と見ている側面もある。

前回大統領選では、白人系ユダヤ人の83%がオバマを支持した。彼のミドルネームがムスリムのそれであってもである。

去年、オバマが67年の境界を国境確定交渉の基礎とすると提唱したとき、米国最大のユダヤ人団体である名誉毀損防止同盟 (ADL)は、これに対して肯定的な評価を行った。とにかく二国間交渉による境界確定というゴールにむけて、その土台を構築すること、そのための譲歩は認めなければならないという考えである。アメリカ・ユダヤ人委員会(AJC)もほぼこのラインと思われる。

選挙戦終盤に行われたユダヤ人への世論調査では、ロムニー候補が57%で、オバマ大統領の22%を大きく上回った。もっともこれはテルアビブ大学が行った調査なので、相当バイアスがかかっている可能性はある。

シオニズムを声高に主張するのは、遅れてきたユダヤ人であり、人種的には中東系であったりアフリカ系であったりする。彼らはリベラルでもなくインテレクチュアルでもない。イスラエル政府を背景とするアメリカ・シオニスト組織(ZOA)は、オバマを「かつてなくユダヤ人に敵対的な大統領」と非難する。彼らが多く住むフロリダでは、共和党への鞍替えの動きも出ている。


ユダヤ人内の富裕層は、アメリカの権力の中枢を成す軍産複合体に、何らかの形でかかわっている。一般的な政治信条はユダヤ人マジョリティーと共通するものを持っているが、軍産複合体の利害が絡む問題に関しては徹底的に党派性を発揮する。故国なき民にとっては、彼が何をしているかが、彼が誰であるかを規定するのである。

したがって、これまでのアメリカのパレスチナ政策に影響を与えてきたのがユダヤ系ロビーだとするのは正確でない可能性がある。むしろ軍産複合体や石油メジャーを通じての圧力が規定的なのではないかと思う。