大企業20社で、年間利益剰余金が1兆5千億増えたそうだ。
さすがに電気産業はパナソニックのみ、しかも16位だ。トヨタが圧倒的で、一社だけで12兆円溜め込んでいる。つまり日本は今やトヨタ帝国となっているということだ。まさに一将なりて万骨枯るという構図になっている。
えげつないのが銀行筋で、三菱UFJは8千億も内部留保を増やした。三井住友も、あのみずほでさえ増やしている。結局、金融緩和でありあまる金は、その預け先である銀行に儲けをもたらしているようだ。銀行なくして経済なしというのは認めるにしても、国債だけ買っているんでは銀行の意味がない。銀行栄えて国滅ぶというんでは困る。

ところで、共産党はこの膨大な内部留保を経済活性化に役立てようというのだが、その仕掛けは意外に難しい。賃上げと増税というのだが、賃上げはあまり即効性が期待できず、手続きもかなり厄介だ。法人税の増税はそれ以上に難しい。逆に経済状況さえ良ければ、投資意欲は一気に膨らむと思われ、まさに民間活力が爆発するだろう。

内部留保を収奪するという北風政策は、筋としては正しいが有効かどうかは分からない。太陽政策も組み合わせないとなかなか進まないだろう。地デジ対応とエコカー減税はかなりの有効性があった。しかし金のばら撒き先が間違っていたから、不況構造を変えるどころかかえって深刻化させた。もうこの愚は繰り返すまい。

この間の政府の政策で最も優れたものは電気の買い取り制度だろう。菅首相、どさくさにまぎれてたいしたことをしでかしたと思う。新エネルギー関連はもっとも有望な産業分野であり、中小企業の参加も比較的容易である。さまざまな試行のなかで、日本に最も良いエネルギーミックスが形成されていくだろう。発送電分離も早期に実現すべきだろうと思う。

日本の戦後の高度成長、とくに70年以降の成長を支えたのは、皮肉なことに公害闘争だった。公害防止のための新技術開発が、結果的に日本経済を支え、国際競争力をも高めたのである。あのときも財界は「公害防止などやっていたら、国際競争に負けてしまう」と主張していたことを思い出す。

以上のことは、当面の緊急政策としての話題であり、長期的には雇用条件の改善が安定的循環をもたらすことは明らかである。97年以降、次々と崩されてきた労働法規を元に戻し、保険料負担もしっかり徴収することで、「一体改革」の中身はすべて実現される。

ただそれまで待っても居られないということを前提にしての緊急策である。