「財政の崖」はたしかに存在する。しかしその崖は富裕層が作り上げているものだ。
それは、大統領選挙でオバマが勝利したことで、基本的には解決された。
一つは、歳出の自動削減を唱える共和党右派の敗北である。もちろん民主党が勝利したわけではないから、下院の壁は依然として残っている。しかし鉄壁ではなくなった。
もう一つは、今回の選挙が残した置き土産が、富裕層に対するいっそうの不信感だということである。4年前、自らの招いたリーマン・ショックで破産の危機に陥ったのを、オバマの財政出動で救われた。そのことを忘れて、極右の尻馬に乗って、ありあまる金を使って、ネガティブ・キャンペーンに奔走した富裕層の姿は、国民の目に焼き付けられた。

選挙後、これまで減税について中立的だった議会事務局(CBO)が、減税延長の経済効果について新たな試算を発表した。

赤旗の報道によると以下の通り。
①富裕層を含めて減税を延長した場合のGDP押し上げ効果は1.5%弱
②世帯年収25万ドル(2千万円)以上の層への減税を打ち切った場合の、押し上げ効果は1.25%
ということで、差し引き0.25%にしかならない。

歳出の自動削減が不可能となれば、共和党の矛先は医療保険に向かうことになるだろう。医療保険に対する国民の反感はたしかに根強い。日本における生活保護への反感と同じである。

富裕層から金を取るだけではダメだ。それが貧困層、社会的弱者に回されて初めてチェンジのうねりが始まる。ここが踏ん張りどころであろう。