以前にも、法人と個人の本質的な違いについて言及したが、法人の選挙運動を容認することがいかなる結果をもたらすかは、今回の大統領選挙を通じて明らかになった。
これを容認した連邦最高裁の「シティズンズ・ユナイテッド判決」への批判も強まりつつある。
アメリカが違うのは、ダメとなったら専門家や知識人の批判を待たずに住民が直接立ち上がることだ。
今度の大統領選挙で、コロラド州とモンタナ州ではこの判決の是非を問う住民投票が行われ、両州とも勝利した。

法律の話なので、少し解説を加えておかないと分かりにくい。

2010年1月に、シティズンズ・ユナイテッド(NPO)が選挙資金の企業献金の自由化を求めて裁判を起こした。
これに対し連邦最高裁は次のような判断を示した。
①政治献金に対する規制は、言論の自由を保障する憲法修正第1条に違反する。
②企業・団体も「自由人」として選挙への参加を認められるべきだ。

この辺の経過は英語版Wikipediaを参照のこと。

これに対してモンタナ州の住民投票は、「企業に自由人の資格はない」という主張をめぐり行われた。この主張は75%の支持を得て可決された。

コロラド州では、選挙への献金は制限されるべきだ。それは集や連邦の憲法に盛り込まれるべきだ。という主張が住民投票にかけられた。ここでも74%の支持で可決された。

カリフォルニア州では企業や労組の政治献金を禁止するという主張が住民投票にかけられた。さすがにこれは、正しくはあるが多少過激だったようで、55%が反対に回り否決された。

ということで、今回の大統領選挙は、企業の野放図の活動が許された最初で最後の選挙になるだろう(と期待する)。

カリフォルニアではこの投票は敗北したが、州知事の提案した富裕層の増税提案が住民投票にかけられ成立している。
州財務省によれば、これにより今後4年間で140億ドル(約1兆円)の増収が見込まれ、その全額が教育関連にまわされるという。
1兆円というのはすごいですね。これで富裕層がカリフォルニア州から逃げ出すか、そこが最大の見ものになりそうだ。