産業革新機構などというものは、今まで知らなかった。しかしちょっと調べてみると、かなり怪しい機構で、こんなものがどうして出来てしまったのかがわからない。

要は税金使って自己勘定取引しようというのだから、かなり恐ろしい発想だ。ボルカーが聞いたら腰を抜かすのではないか。より機動的に資金注入するのが狙いのようだが、機動的に売り逃げもやるのか、ここが最大の問題だ。それが出来なければ、確実にババをつかまされることになる。

信用供与も含めて1兆円、これでレバレッジをかけて、かなりのリスクテークするとなると、大穴あいたらどうするんだろう。赤字国債垂れ流すよりはるかにたちが悪いのではないか。

それで少しネットをあたってみたが、原則的なレベルからの批判はほとんど聞かれない。

とりあえず下記の記事を紹介する。

ダイヤモンド・オンライン

2012年4月20日

革新機構のシステムLSI再建策はナンセンス
これが民の意欲と力を輝かせる産業政策だ

1.システムLSI再編に関する産業革新機構案は疑問だらけ

報道によると、産業革新機構はルネサスとエルピーダの工場を、グローバルファウンドリーズ(GF)社と共同で買収・統合しようとしているらしい。 革新機構案が、今やいかにナンセンスになっているかを指摘したい。

2.GF社自体が抱えるこれだけの問題

GF社は2009年に米AMD社が、ファブをアブダビATIC社に売却して、ロジック系の専業ファンドリーに仕立てた会社である。 (なんやこりゃ?)

28nm微細ラインの量産稼働が主力だが、2012年3月、最大顧客だった米AMD社が契約を破棄・改訂する有り様。そのATIC=GF社と組んで3つの工場を買収しようというのが、産業革新機構の構図になる。

しかし本気で再建するのなら3工場で済むわけがない。GF社の全体をも丸呑みで買収して、全体経営権を握りながら立て直しを考えるしかない。それには5000億円を超えるような資金が必要になるだろう。

3.富士通三重とルネサス山形に収益反転の兆し

実は、300mmファブの富士通三重とルネサス山形は、どちらも業績反転・収益化の芽が出ている。必ずしも「救済」の対象ではない。それでもなお革新機構が買収しようとするならば、高値づかみになる。

ルネサス山形も、ルネサスから切り出してスキームを整えれば、自力で利益を出せる事業体にすることは可能だ。

組み込みDRAM技術を強く支持する大口顧客をうまく組み合わせ、「シェアド・エンジニアリング・ファンドリー」に仕立てることが可能である。

既存の垂直系列からスピンオフ事業体に移行すれば、それが可能になってくる。顧客と利益をシェアする共同体を結成すれば、それぞれの専業的収益化が成り立ち得る。

その総体が、日本半導体の新たなかたちの「産業生態系」を形作るべきだし、それは可能なはずである。

4.現場の士気を鼓舞する力強い産業政策を打ち出せ

経済産業省や、産業革新機構は、上記のような産業生態系に向かって一つ一つ布石を打っていくべきではなかろうか。

半導体産業政策は、1940年代末のトランジスタ発明の頃から続いてきた。転換点をもたらしたのは日米半導体摩擦にともなう日米半導体協定だ。

米国は日本の民生用半導体市場などに食い込むことができた。逆に日本のアナログ半導体は強みをかなり失った。

5.半導体をめぐる産業政策に天王山が迫る

今や日本半導体産業の危機はエルピーダだけではない。あちこちで火が吹いている。

経済産業省は、山形工場などをルネサスからスピンオフし、収益化するモデルなどにテコ入れすべきだろう。

同省が、「既存の大企業の合従連携」というウンザリさせられるありきたりの案から離れて、現場レベルの深い情報を賢く活用し、現場の士気を鼓舞するような、力強い産業政策を打ち出すならば、日本国内にも、まだまだ収益化できる半導体の工場と設計部隊がある。

同省がそうした政策に乗り出すかどうかが、わが国の力を世界にアピールし、収益化し、士気を高めるか否かを決することになろう。

半導体をめぐる産業政策にとってのいわば、天王山が迫っている。


難しいけど、とてもよい記事だと思います。経産省が90年代半導体戦争以降、かつての矜持を失い、アメリカの成すがままになったことに今日の半導体危機の基本があることが分かります。

しかも、この危機に臨んでも、産業革新機構という財界の再編策にそのまま乗っていることに記者は最大の危機感を抱いています。

「行政指導」という国家にとっての伝家の宝刀を手離し、株屋に譲り渡すことの意味はかなり深刻なものがあります。それが今回のエルピーダ・ルネサス問題に象徴的に示されているのではないでしょうか。