老健の医師は胃瘻に消極的なことが分かった。

これは全日本病院協会が施設・職員を対象に行った胃瘻に関するアンケート調査。
http://www.ajha.or.jp/voice/pdf/other/110416_1.pdf
調査が実施されたのは平成22年である。
いろいろな表があるが、これはその一つ。


https://livedoor.blogimg.jp/shosuzki/imgs/4/1/4143d601.jpg

これで見ると、老健の医者の半分は胃瘻などやらないほうが良いと考えているようだ。相当毛色の変わった人物が多いということが分かる。

これに対して介護や看護職の半数近くは、必要なら胃瘻も選択肢の一つにしている。老健の主力は介護職だから、実際に介護してみて、こういう感じかなという気がする。
食事の介助に30分とか1時間近くもかかる入所者もいる。そうやって介助している人たちの感想だから、この数字は尊重する必要があると思う。老人にとっては食べることも重労働なのだ。
けっして介護の仕事が大変だから胃瘻ということではない。なぜなら、大変だから介護という仕事が生まれ、介護スタッフはそれで飯を食っているからである。

介護型老健では胃瘻患者は全国平均で7%前後だから、実際に胃瘻患者を見ているわけではない。胃瘻が必要となれ関連病院にお願いすることになるし、胃瘻を造設すればしたで、療養型の施設に移っていただくことになる。


そういうことも含めて40%以上のスタッフが部分的にせよ胃瘻は必要と判断している。問題は医師がそう思っていないことだ。

医者が特別にヒューマニスティックとは、私には思えない。むしろ老健の医者があまり入所者を診ていないのではないかと思う。過激な言葉を使うが、胃瘻は坊主談義では語れないし、語るべきものでもない。個別の治療の経過の中でいやおうなしに、一つの選択として迫られるものだ。
自分としては、個別のケースを追究していけば、胃瘻という結論にしか達し得ない人がたくさんいると思う。そうやって胃瘻で生き返る人もたくさん見ている。

「そこまでしたくない」という世間一般の気持ちはわからないでもない。でも私は「胃瘻くらいで」と思う。胃瘻は“延命治療
ではない。そもそも違う範疇の話だ。(“延命治療というのもいやな言葉だが)

たとえば車椅子生活を送る人を見て、「車椅子に乗ってまで生きたくない」と思う人がどのくらいいるだろうか。

と言いつつも家族の圧力に負けることもあるが、「胃瘻をやるべきではない」と思ったことはない。だから医者の半分が「やるべきではない」と考えていることが不思議でならない。