前にも一度出しましたが、データがそろったので再掲します。

高齢者の疾病悪化の実態: 老健入所者の医療機関への異動理由の分析

検討の目的

老人保健施設(以下、老健と略す)は、医療機関と在宅をつなぐ中間施設としての役割を担っている。しかし高齢者は加齢と ともに心身機能が低下してくるので、在宅復帰が出来ないまま入所期間が長期化したり、在宅でのケアーが困難となり入所されるケースも多い。この場合、さら に体調が悪化し医療機関への移動を余儀なくされることも少なくない。

今回、老健から医療機関へ異動したケースを分析し、「いわば半病人を全病人にしない」ようにするために、どのような点に留意すればよいのかを検討した。

 

調査対象

当施設は100床の介護型老人保健施設である。2010年7月より2012年6月までのあいだに、110名の利用者が当施設より退所した。

 病状悪化等により医療機関への異動となったのは100ケース(男性32、女性68)であり、これを今回の検討の対象とした。なお複数回にわたり転出・転入を繰り返したケースもあり、実人数としては72人である。

 

表1 転出先の内訳

退所先

 

 医療機関

100

 自宅

5

 その他施設

 院内死

1(心臓突然死)

 

表2 転出者の年齢・性別内訳 ()内は実人数

転出時年齢

*在籍者

79歳以下

 10

 14

24

 

80~84歳

 4

 10

14

 

85~89歳

 11

 15

25

 

90~94歳

 6

 23

29

 

95歳以上

 1

 8

 

各年齢層に分散しているが、79歳以下の比較的若年者で退所者が多い傾向がある。入所時より特定の疾患を有しているケースが多いことが要因と考えられる。*は2012年7月現在の内訳である。

表3 転出者の介護度内訳

要介護度

転出者数

*在籍者数

 

21

 

17

 

26

 

27

 

介護度の高いケースで転院の割合が高くなるが、介護度が高くなくても転出する人は少なくない。*は2012年7月現在の内訳である。

表4 転出者の認知障害度別内訳

認知障害度

転出者数

*在籍者数

 

26

 

57

 

 

認知障害が高度なほど、転出者が多い。この傾向は年齢・要介護度に比べ強い。

 

表5 転出までの入所期間

1年未満

51

(再掲 3ヶ月未満)

24

2年未満

17

3年未満

3年以上

14

半分以上が入所1年未満の転出である。3ケ月未満の入所期間の多くは、複数回退所者である。

 

表6 入所時の主病名(入所の理由となった病名)

脳卒中後遺症

41

認知症

28

骨折など整形疾患

11

心筋梗塞・心不全

イレウス後状態

ガン術後

慢性閉塞性肺疾患

統合失調

認知症はアルツハイマー、レヴィ小体、脳動脈硬化性をふくむ。イレウス後状態の7ケースは二人の入所者が繰り返したものである。認知症が主病名でない場合も、認知障害の合併は多く見られる。

 

表5 転出の理由となった主病名

摂食障害(食思不振・拒食など)

 25

急性腹症(イレウス、胆石など)

 18

肺炎(感染性、誤嚥性など)

 11

骨折など整形疾患

 11

心筋梗塞・心不全

 9

腎・泌尿器系疾患

 6

脳血管疾患

 6

PEG管理

その他

11

急性腹症は同一者の複数回転出があり、実人数は12人である。“PEG管理”はPEG造設した後いったん施設に戻り、その後療養病床に転出したケースである。

 

小括

1.年間50%の頻度で入所者の転出が見られる。そのほとんどが病院への転出であり、自宅復帰の比率はきわめて低い。

2.病院転出者と年齢、要介護度とのあいだには強い関係は認められない。いっぽう、転出者と認知障害度とのあいだには一定の関係が推測される。

3.入所時病名の41%を脳血管障害が占めるが、入所中の脳血管障害の再発はきわめて低い。これに対し整形疾患、心疾患では転入・転出数がほぼ同数となっている。

4.食事・排泄にかかわる不調が転出理由となることが多い。これは認知症の臨床的終末像が摂食・排泄障害に収斂する可能性を示唆する。

5.今後、老健の機能にかかわって、胃ロウ造設と経管栄養の管理が問題となるであろう。特に認知障害度の高いケースで早急な判断が求められる。