II. 地体構造区分の研究略史:

これまでに日本に段階的に導入された重要な年代決定手法は次の4 つであった。すなわち,(1)大型化石による生層序学・年代学,(2)火成岩と変成岩の放射性年代測定,(3)微化石層序学・年代学,そして21 世紀初頭の研究前線を切り開く(4)砕屑性ジルコンのU-Pb 年代測定である。

 1)大型化石年代

 近代地質学が日本に定着するまでの19 世紀末から20 世紀半ば(明治から昭和前半)では,堆積岩から産する大型化石が唯一の年代決定基準であった。構成岩石の種類とそれらの化石年代をもとに,複数の地体構造 単元が識別された。これによりフォッサマグナ,中央構造線などの代表的な大規模地質構造が解明された。

しかし,各単元間の定義および帯相互の境界位置などはまだかなり曖昧な状態であった。

 2)放射性年代と微化石年代I

 第二次世界大戦以後は,火成岩および変成岩について放射性年代測定が可能となった。これによって化石を産しない火成岩や変成岩の年代がはじめて具体的に示されるようになった。堆積岩についてもより高い年代分解能をもつ微化石が頻繁に利用されるようになった。

しかし,年代測定を行う機器をもつ研究施設は少なく、日本列島のすべての地体構造単元の年代が明らかにされたわけではなかった。

 3)微化石年代II

1980 年前後には,造山運動の原動力がプレートの収束プロセスであったことが確認された。複雑な堆積岩複合体の実態が過去の付加体であると認識されるようになった。この付加体の年代決定において,微化石層序が決定的な役割を果たした。

簡便な微化石抽出法は急速に普及し,地域地質学と結びついて日本全土から短期間に大量のデータが生み出された。また1990 年前後には,放射性年代マッピング法が導入され,弱変成付加体に明確な年代基準を与えた。この場合も地域地質学と密着した多数の年代測定がなされた。

これらの研究によって,日本列島の基盤岩をなす地体構造単元のほとんどが過去の付加体とその高圧変成部であることが明示された。

 4)砕屑性ジルコン年代学

 21 世紀初頭の現在,新手法として注目されるのが砕屑性ジルコン年代学である。近年の性能改良により,多数試料の迅速測定が可能となった。

この手法の導入により,日本列島の地体構造論において次の2 点について大きなブレークスルーがおこりつつある。

(1)粗粒砕屑岩主体の地層の年代推定が可能となった

(2)高圧変成作用を被った付加体の原岩形成年代を明らかにできるようになった。