実需取引の原則

為替の先物予約を行うときの原則である。
先物取引は「貿易取引(輸出入)や貿易外取引(投資)などの実需取引(キャッシュフロー)が背後にあるときに限られる」というもの。

外国為替管理法にもとづいて大蔵省令が発令され、為替先物取引を規制していた。
規制の根拠は、「実需を伴わない為替取引は投機につながり、為替相場の安定が損なわれる恐れがある」という考え方による。
これには欠点もあり、とくに企業が手持ち外貨を持たないことは、迅速な取引や契約に大きな制約となる。また為替変動に対する柔軟性がないため、為替リスクをまともにかぶることになる。

1984年4月に撤廃された。
要するに外貨不足時代の規制であり、時代遅れとなったことは否めない。しかしそれに変わり為替投機を規制する方策は採られないままだった。

現在では自由にいつでも為替予約が可能になったので、企業による為替投機取引も増加することになった。なぜなら為替リスクのヘッジをとる操作と、ディーリング操作には外見上の相違はないからである。

1985年のプラザ合意の後、劇的な円高が進行した。日本の機関投資家は膨大な為替損をこうむることになる。このときに先物為替予約のドル売りヘッジが爆発的に拡大することになる。

ということで、変動相場制に移行後も円安を続けられた制度的根拠として、目の敵にされたのではないだろうか。
大蔵省が反対したのも、高邁な理由というよりも、自己の権益が喪失することへの抵抗ではないだろうか。
もう一つはプラザ合意への布石としてみるということだろう。
ドル高につられてアメリカに吸い寄せられた日本のドルを、一気に半減させたのだから、アメリカとしては大成功だ。
二階に上げて、梯子をはずし、最後に突き落とすという寸法だ。ヘッジといっても二階から落ちてきた人に座布団1枚差し出すようなものだろう。