赤旗経済面で、フコク生命のマンスリー・レポートが紹介されている。

見出しは「賃金下落、非正規増が要因」とされている。中身が相当突っ込んでいるようなので、本文に当たってみた。

 http://www.fukoku-life.co.jp/economic-information/report/download/report_VOL229.pdf

本文の題名は「明暗が分かれる男女の賃金動向」というもの。私から見ると、「アラフォー男性の落ち込みが、経済をだめにしている」みたいな見出しをつけたくなる感じ。


最初にポイントがあげられている。

①賃金は全体に低下しているが、実際に下がっているのは男性労働者であり、とくに30歳代で低下が目立っている。

②その要因は、主として非正規社員の増加と、年功賃金カーブのフラット化である。したがって低下をストップさせるには、非正規社員の正社員化が不可欠だ。

次にイントロ

この調査を施行するきっかけとなった数字が挙げられている。それは国民年金保険料の納付率が58.6%にまで低下したということだ。

調査担当者は、これを“国民の所得環境が一段と厳しさを増している”ことの象徴と受け止めている。そして以下の文章で、所得環境の変化を跡付けている。

1.90年代以降の賃金動向

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ここでも、1997年がピークで、かつ変曲点であることが分かる。97年と現在を比較すると、現金給与総額は12.4%の減少を示している。消費者物価が3%低下しているので、実質9%の下落となる。

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二つのことが言える。

①35~45歳の男性が賃金低下のすべてを引っかぶっている。それが起きたのはわずか5年前からのことである。

②50歳以上の世代はじわじわと下がっている。

つまり、青色の2011年ラインはそのまま右側にシフトし、賃金の低下は今後ますます進行するということである。

2.非正規社員の増加が平均賃金を抑制

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男性非正規労働者の割合は25~34歳で4倍に増えている。しかしそれより若年でははるかに高くなっており、今後この傾向は右側にシフトしていくと考えられる。

2011 年の賃金構造基本統計調査によれば、「正社員・正職員」の男性の賃金34.0万円に対し、非正規は22.2 万円で、正社員の65%の水準。

3. 正社員の賃金水準も低下

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標準労働者というのは、“学校卒業後直ちに企業に就職し、同一企業に継続勤務しているとみなされる労働者”、つまり正社員のことである。

ここでも35~39歳男性の落ち込みが激しい。10%を超え、年収にして50万円以上の落ち込みだ。

4. 低賃金労働者の著増

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ちょっと複雑な図表だが、男性に限って、年齢を30歳から44歳に限って、10年前と比べて、賃金分布の変化を見たものである。

荒っぽく言えば、青は生保ライン層、赤の斜線はワーキングプアー層ということになる。

30万円が貧困層と「中間層」を分ける協会とすれば、とくに35~39歳で10年前の27%から50%へと倍増したのが目に付く。つまりワーキングプアーが10年前には4人に一人だったのが、2人に1人ということになったわけだ。

対照的に、40万~60万のプチ・リッチは半減している。

著者は結論として、もっとも旺盛な需要を持つ筈の、この年代における賃金の低下が、国民生活に及ぼす影響を憂慮している。

そして国民年金納付率の低下もその一環だとしている。そして最も典型となるのが所得税額の減少だとしている。

…所得税額は、この5年間で約10兆円から7兆円に減少した。これは低賃金層の増加によるものである。

…給与所得が500 万円以下の層は全体の72.9%であるが、所得税額に占める割合は20.0%にすぎない。つまり、低所得者層の増加が所得税額全体を押し下げる要因となっているといえる。


図表はすべてフコク生命調査部が自ら作成したものである。著者、森実氏のご苦労に感謝したい。

この調査は、このような労働者階級の貧困化がなぜ起きたのかについては触れていない。私が補足するならば、それは構造改革=労働力流動化路線の直接の結果である。低下の程度から見ると50歳以上の世代も同じくらい低下はしているが、それは10年かけて徐々に下がっているので、低下の機序は異なるものと考えられる。

ともかく、労働組合のパンフレットかと見まごうような資料が、大企業のシンクタンクからも出されている。そこまで問題は深刻化しているということだ。これが今の状況である。