現時点での感想的評価
①トゥアレグ人のマリ政府に対する感情には複雑なものがある。
彼らはベルベル人の一支族であり、地中海のセム系人からはさげすまれる一方、黒人をさげすんでいた。彼らは黒人を奴隷として扱い、奴隷売買を積極的にになってきた。彼らの階級社会は白人の貴族階級、有色の下僕階級、黒人の奴隷階級からなっており、現在奴隷階級は廃止されたが、意識の中にそれは残っていると思われる。
②トゥアレグは貧困化し、辺境の民と化しつつある。
マリという国家の中で、かつて奴隷とさげすんだ黒人に支配されている。頻回に起こる旱魃のために彼らは家畜を失い困窮化し、国外に職を求める流浪の民と化している。しかしかつてのトゥアレグは貿易で栄え、高い文化を持ち、財宝に満ち溢れていた。望郷の念と懐旧の念は彼らの民族感情をゆがんだ形で燃え立たせている。
③独立路線の先に未来はない。
たとえ有り余る武力で独立を達成したとしても、経済的には自立は不可能である。弾丸は撃ち尽くせばそれで終わり。補充する金もない。可能性としてはふたつ。一つは"領土"内に金かウランの大鉱脈が見つかること、もう一つはマリやその他の隣国を侵略し支配することである。これは墓穴を掘るようなものだ。昔なら「社会主義」かなんかの看板を掲げてソ連・中国の援助を当てにすることもできたかもしれないが、今日ではせいぜいがアルカイダだ。(ロシアは昔の癖で鼻を突っ込みたがっているようだが)
④高度な自治の実現が落しどころだ。
落し所は、従来以上に高度な自治権の獲得だろう。たしかに黒人が支配するマリ政権とは水と油だし、同化せよとの要求は過酷だ。国境は欧州列強が勝手に引いたもので、そもそも不自然であることはまちがいない。しかしそれは目下のところ甘受するほかないのである。
マリ政府は民主主義の名の下に、民族政党や宗教政党を否定してきたが、これは改めなければならない。トゥアレグ人は一人一票を厳密に適用すれば、少数民族としてのアイデンティティーを失ってしまう。国境が人為的なものである以上、それを甘受するしかない以上、少数民族の自治を最大限に保障することで、それを補償するしかないのである。
⑤アルカイダとの絶縁が先決問題だ。
そのような方向を目指すなら、まずアルカイダへの態度を明確にすべきだ。トゥアレグは「敵の敵は味方」と思っているようだが、アルカイダはトァアレグにとっても敵だ。まずトゥアレグの社会・生活様式はイスラム原理主義にとって許されない。第二に彼らの目標は北部の独立ではなくマリという国家の乗っ取りであり、国際テロ活動の拠点化なのだ。第三に、アルカイダは"トゥアレグ政権"の指揮の下に入る気など毛頭ないことだ。それどころか組織そのものを乗っ取ろうと狙っている。
アルジェリアのアルカイダは敵に対する容赦のなさで名を知られている。市民に対する無差別大量虐殺も辞さないとびっきりのワルだ。その冷酷さについては、20年ほど前に北海道AALAで報告したことがある。とりあえず、ウィキペディアを参照していただきたい。http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AD%A6%E8%A3%85%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%83%A0%E9%9B%86%E5%9B%A3
もっともカダフィ傭兵としてのトゥアレグも相当ひどかったが…