アジア経済研究所の研究叢書392号で「東アラブ社会変容の構図」という本がある。1990年の発行だからかなり古い。まだ消費税3%の時代である。まだアジ研の住所が市谷になっている。
おかげで、というのもなんだが、4400円の本がただで読める。

長沢栄治先生の編集で、何人かの共著者が執筆したものである。大変浩瀚なもので、読むのに一苦労だが、そのなかでとりわけ興味深いのが、

第一部 委任統治期パレスチナにおける民族問題の展開(臼杵陽)
および
第二部 エジプト資本主義論争の構図と背景(長沢栄治)
である。

第一部は副題が パレスチナ共産党に見る「民族」の位相
であり、パレスチナ共産党を1920年の党創立から43年の最終的分裂に至るまで時系列で追いながら、きわめて特異な状況下でのきわめて特異な路線と、その背景を明らかにしている。
読んでいると、彼らが担わされた課題のあまりの重さに、つい同情してしまう。
逆に言えば、さまざまな弱点はあるにせよ、よくぞここまで国際主義(昔風に言えばレーニン主義)を貫き通せたものだと感動する。

事実のあまりの重さに、いまはコメントすべき言葉が見当たらない。すこしほかの資料も追加した上で、何らかの紹介をして見たい。

とりあえずは、パレスチナ(イスラエル)年表に突っ込んだので、そちらを参照していただきたい。