AudioGate への賞賛を多少割り引かなければならない。
たしかに高音は伸び、輝きを増す。低音は唸るように迫る。ダイナミックレンジは広がり、弱音も手にとるように聞こえる。
しかし細かいパッセージは消えてしまう。切れ込むような鋭い音もカドが取れてしまう。バイオリンの弱音でのかすれるようなため息も聞こえない。
ようするに音色は派手になるが、ばばあの厚化粧で、濁りが出てしまうのである。

このところムーティ指揮バイエルンRSOの演奏するシューマンの交響曲第4番が気に入っていて良く聞いている。この録音はコンサートライブで、ダイナミックレンジも押さえられ、高音も詰まる。しかし中音弦がよく聞こえて、室内楽を聴いている趣があって、これはたぶんムーティの演出なんだろうと思うが、とても興奮させる。

これをいつものfoobarでなくAudioGate で聞くと、もうまったく違う演奏を聴いているようだ。肝心の中音弦のトレモロやグリッサンドがどこかに消えてしまっている。つまりシューマンではなくなってしまっているということだ。

ところが、モーツァルトのバイオリンソナタを聞くとこれが猛烈にいい。ギル・シャハムのK305もお気に入りの演奏だが、AudioGate で聞くとクリームのように濃厚だ。アンネ・ゾフィー・ムターのボディコン・ドレスを思い浮かべてしまう。

AudioGate の編集→設定でレイテンシーという項目があって、デフォールトでは1024になっているが、これを下げるとだいぶ事情は改善するようだ。もちろんWASAPIはオンにしなければならない。

たぶん一定の時間幅の音を重ねて、それから演算してFレンジやDレンジを稼いでいると思うのだが、その分時間分解能が犠牲になっているのだろうと思う。

もう少しいろいろな曲・演奏・録音で聞き比べて見なければならないが、曲や演奏の性格にあわせてfoobar とAudioGateを使い分けしていくことになる化も知れない。どちらが基本かといわれれば、当面はfoobar ということになるのだろう。