このことに関連して明記しておかなくてはならないのは、アメリカはもはや、中国の膨張主義に対して関与するつもりはないということである。アメリカの目標は、少なくとも東アジアにおいては国益の追求のみである。

「日米同盟」は役に立たない。中国はこのことを見切っている。日本は「虎の威を借りる狐」として東アジアに君臨してきたが、アメリカは虎ではなくなった。

日本に出来ることは、東アジアに平和の網をかぶせ、多国間交渉の中で中国に自制を促すほかない。

これからの東アジアは中国という超大国と、日本・韓国・東南アジアという周辺諸国の調和・均衡の構造に移行する。日本が依拠するのはチェンマイ・イニシアチブを頂点とするASEAN+3経済共同体の強固な枠組みである。

そのなかで、経済的には、中国とそれ以外の諸国による競争的共存体制がしばらく続くことになるだろう。
ただ競争的共存が永続するわけではない。中国内部には確固とした多国間主義の潮流が存在するし、早晩、彼らが政治の主流に復帰するだろうと確信している。